インボイス制度で一人親方は廃業の危機?すぐできる対策と今後の働き方を徹底解説
職人・一人親方一人親方の方々は近年、「インボイス制度」という言葉をよく聞くようになったのではないでしょうか。インボイス制度の導入によって、今後一人親方は仕事がなくなる・廃業になるとの情報もあります。この記事ではインボイス制度の簡単な概要と、一人親方に生じる影響について解説していきます。
インボイス制度と一人親方
インボイス制度の概要
インボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)とは簡単に言えば、消費税を受け取った方は正しく消費税を納めるという内容です。今までは、消費税を受け取った事業者であっても売上高が1,000万円以下の免税事業者は消費税を納める必要はなかったのですが、今後は代金を受け取った側が消費税を支払わない場合、代金を支払う元請け側が、消費税を改めて納めるという制度になりました。
そのため、元請け会社は必要以上に利益を減らさないために、免税事業者に仕事を発注しないようになるので、結果として売上高が1000万以下の免責事業者に仕事が回ってこなくなるということに繋がります。
消費税の仕組み
一人親方が元請け会社に請求を立てた後、元請け会社は発注金額と消費税をお支払いします。一人親方は元請けから受け取った消費税から、自分が事業のために支払った消費税を引いた金額を申告・納税します。
しかし、年収1000万を下回る免責事業者は消費税を支払う必要がなかったため様々な問題が水面下で引き起こされていました。
偽装一人親方問題
売上が1000万円以下の事業者が免税事業者となることで、それを逆手に取った雇用方法が非常に問題視されており、それが偽装一人親方問題です。
偽装一人親方問題とは、働き方の実態としては従業員として従事させながら、企業が社会保険料の負担を免れること等を目的に、雇用ではなく請負の形態で契約を結ぶ「偽装請負」を結んでいる一人親方がいる状態の事です。
「偽装請負」により適正な納税がなされていない現状は長い間ブラックボックス化されていましたが、インボイス制度の導入により偽装一人親方問題が解決に向かう事となるでしょう。
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インボイス制度が始まる前に一人親方が進めるべき3つの準備
インボイス制度の導入により、今までは免税事業者だった一人親方は、これまで通り仕事を進めていく事が困難になります。
インボイス制度が始まる前に一人親方が進めるべき準備は以下の3つです。
- 課税事業者・免税事業者のどちらになるか決める
- 簡易課税制度を導入する
- インボイス制度に対応した請求書を準備する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
課税事業者・免税事業者のどちらになるか決める
まずは課税事業者・免税事業者のどちらになるか決めましょう。
一人親方が課税事業者・免税事業者のどちらを選択するかによって、生じるメリットやデメリットは異なります。
それぞれのメリット、デメリットは記事の後半で紹介しているので、確認してみてください。
簡易課税制度を導入する
簡易課税制度を導入することで仕入控除税額の算出を簡易的にできます。
インボイス制度の導入は、消費税を払う金銭的な負担が増えるだけでなく、請求書・納税にあたっての事務処理の負担も大きくなるため、簡易課税制度を活用し、納税手続きを簡略化する事も可能です。
簡易課税制度を導入するには、手続きが必要ですので、必要な手順を事前に確認しておきましょう。
インボイス制度に対応した請求書を準備する
インボイス制度が始まれば、今まで利用していた請求書の書式では対応できなくなります。
インボイス制度で課税事業者を選んだ一人親方であれば、制度がスタートする2023年10月までに請求書の書式や経理ツールなどを準備しておくのがおすすめです。
事前にインボイス制度に適応した経理ツールを導入しておけば、事務処理作業の手間を削減して、作業効率化につながる可能性があります。
インボイス制度で課税事業者を選んだ一人親方のメリット
インボイス制度で課税事業者を選んだ一人親方のメリットは仕事や取引先が減るリスクがなくなる点です。
適格請求事業者になることで、納税や請求書の複雑化など、一人親方の方が踏むべき手続きはありますが、今までどおり仕事を継続できるでしょう。
インボイス制度で課税事業者を選んだ一人親方のデメリット
インボイス制度で課税事業者を選んだ一人親方のデメリットは下記のとおりです。
- 売上1000万円以下でも消費税を納める必要がある
- 発行する請求書が複雑になる
ただ、これらのデメリットは事前に対策しておくことで軽減することも可能。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
売上1000万円以下でも消費税を納める必要がある
適格請求事業者として登録すると登録番号が付与されます。
これまでは売上1000万円以下の免税事業者は消費税を払う必要がありませんでした。
しかし、適格請求事業者になったことで年収に関わらず課税事業者として消費税を支払う義務が発生します。
ただ簡易課税制度を利用すれば、原則課税で計算した消費税の申告額より少なくなる場合があり、節税できる可能性もあります。
課税事業者を選ぶ場合は、簡易課税制度を利用できるように、事前に準備をしておくことが大切です。
発行する請求書が複雑になる
これまで発行していた請求書は、相手に取引内容が分かるように記載するだけだったため、法律上何を記載するかの規定はなく、発行義務も規定されていませんでした。
しかし、適格請求事業者になった場合は発行すべき請求書の必須項目が増え、より複雑になります。
細かく説明すると、下記の6つの項目に記載が必要です。
引用元:教えて湖東先生!2023年10月実施予定「消費税インボイス制度」(全国商工新聞 第3460号2021年5月31日)
適格請求書は、取引先から発行依頼があれば発行しなければならず、法的義務(消費者法57条の4条1項)が生じます。
今まで以上に請求書の発行の手間がかかるうえ、新しい書式に合わせた発行作業が必要になるため、作業の負担が増えるでしょう。
インボイス制度で免税事業者を選んだ一人親方のメリット
インボイス制度で免税事業者を選んだ一人親方のメリットは、納税額が増えなくて済む点です。
免税事業者を選択すると、従来の規定通り消費税の支払い義務はありません。
支払う金額が減る分、メリットになるように見えますが、支払わなかった消費税の支払い義務は取引先に移ります。
無駄な支払いが必要になる取引先とは、取引を避けられる可能性があるため、一概にメリットはいえないでしょう。
インボイス制度で免税事業者を選んだ一人親方のデメリット
一方で、インボイス制度で免税事業者を選んだ一人親方のデメリットは下記のとおりです。
- 仕事が減る可能性がある
- 取引額を値引きされる可能性がある
- 一人親方同士の仕事依頼が難しくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
仕事が減って廃業する可能性がある
インボイス制度で免税事業者を選んだ一人親方のデメリットとして、最も大きな問題は仕事や取引先が減少する事です。
免税事業者が支払いを免除された消費税は、今後発注者が代わりに支払う事になるため、発注者としては無駄な出費を抑えるべく免税事業者に仕事の依頼をしなくなります。
結果として、収入が減少したり仕事探しが困難になったりすることが予想され、場合によっては廃業の危機に陥ってしまう可能性もあります。
取引額を値引きされる可能性がある
インボイス制度で免税事業者を選んだ一人親方は、仕事を受注する際の取引額を値引きされる可能性があります。
なぜなら免税事業者が支払いを免除された消費税は、発注者が代わりに支払うため、代わりに支払う消費税分の費用をできるだけ無くしたいと考えるため。
受注金額が減ってしまえば、収入にも打撃になります。
値引きに応じるか、仕事を断るかなど、免税事業者を選んだ一人親方は苦しい選択をする頻度が増えるかもしれません。
一人親方同士の仕事依頼が難しくなる
適格事業者である一人親方は、必要以上の出費を避けるために互いに適格事業者同士で取引を行います。
免税事業者は、必然的に免税事業者同士で取引することとなり、結果として取引先が免税されている消費税の支払いを被ることになります。
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インボイス制度を避けたい一人親方が取るべきおすすめの働き方
これまでインボイス制度について詳しく説明しましたが、インボイス制度の課税事業者は制度の内容が複雑で、やるべきことが多いです。
そのため、できるだけインボイス制度のデメリットを受けない働き方をしたいと考える人もいるかもしれません。
インボイス制度のデメリットを受けない働き方をしたい一人親方は、以下の2つの方法を検討してみてください。
- 法人化する
- 転職して正社員になる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法人化する
一人親方はインボイス制度導入のタイミングまでに法人化をするのもおすすめです。
法人化は、社会的信用度が高くなるほか、節税、事業継承が可能になるなどのメリットがあります。
法人としてインボイス制度を利用する必要はありますが、法人化によって節税や社会的信用の獲得ができるため、インボイス制度のデメリットはほとんどありません。
さらに今ならインボイス制度導入に際し、個人事業主への支援策として、法人化した場合に最長2年間の消費税免税が受けられます。
株式会社ビーバーズでは、発注社と協力会社双方をマッチングするサービス「ビーバーズウィズダム」を運営しており、法人化された建設事業者の方々の創業時の案件獲得を積極的に支援しております。
今後法人化をご検討されている一人親方の方は是非ご確認ください。
転職して正社員になる
正社員として転職することも有効な手段のひとつです。
会社員として働く場合は、インボイス制度の仕組みを気にすることなく仕事に従事できますし、福利厚生や雇用保険など、会社の制度を利用できる点も魅力といえるでしょう。
現在、即戦力となりうる人材が不足している建設業界において、一人親方を経験している方は多くの企業からニーズがあります。
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まとめ
今回はインボイス制度の導入が、一人親方にあたえる影響と、今後の対応策をまとめました。
一人親方にとって、インボイス制度導入は結果として減収・廃業へのリスクを高める事になりますので、2023年10月に備え、前倒しをして十分に対策を講じましょう。
本記事が参考になれば幸いです。