行政書士の平均年収や中央値は？上げる方法と働き方や業務内容による違いも解説

行政書士は、法律に関する専門知識を活かして多岐にわたる業務を行う職業です。そのため、収入も働き方や業務内容によって大きく異なるのが特徴です。

そのため、ご自身が行政書士として目指す仕事を決める際には、平均年収や中央値がどの程度なのかを確認したうえで比較、検討するのがおすすめです。

行政書士の仕事や働き方はさまざまですが、まずは行政書士の収入の現状を把握することが重要です。次に、収入を上げるための具体的な方法として、専門分野の選定やスキルアップ、ネットワークの構築などを理解しておくことも大切な要素と言えるでしょう。

なぜなら、働き方や業務内容によっても収入に差が出るため、自分に合った働き方を見つける必要があるからです。上記のポイントを押さえることで、行政書士としてのキャリアをより充実させることができるでしょう。

そこで今回は、行政書士の平均年収や中央値、収入を上げる方法、そして働き方や業務内容による違いについて解説します。これから行政書士を目指す方はもちろん、すでに資格を持ちながら収入アップを目指して転職をお考えの方も、ぜひ参考にしてください。

行政書士の平均年収はいくら？中央値や年収分布も解説

まずはじめに、行政書士の平均年収と中央値について解説します。

平均年収

令和5年度の厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、行政書士の平均年収は約551万円となっています。ただし、これはあくまで全体の平均値であり、勤務形態や経験年数、業務内容によって大きく異なるため、注意が必要です。

また、行政書士の大半が年収500万円以下という情報もあり、高年収を目指すには、不動産業界で資格を活かしたり、独立開業するといった工夫が求められるでしょう。

行政書士の年収は、企業や行政書士事務所に勤務する場合と、独立開業する場合では、収入に大きな差が出ることがあります。独立・開業して成功すれば、取り組む仕事の内容によって年収1,000万円以上を得ることも十分可能です。

年収の中央値

行政書士の年収の中央値は、約300万円〜450万円程度と言われています。この金額は、全体の年収データを並べた際に中央に位置する値ですが、平均年収よりも低い傾向にあります。

これは、行政書士の資格を取得しても、すぐに高収入を得ることが難しいためです。実際に、高収入を得ている行政書士は他の資格を取得するなどして、行政書士の資格をより活かせるように、幅広い仕事に従事しています。

年収の分布

行政書士の年収分布は、大きく次のように分けることができます。

• 500万円未満が約79％
• 500万円〜1,000万円未満が約11％
• 1,000万円以上が約10％

参考：日本行政書士会連合会のアンケート結果より

このように、行政書士の年収は個人の能力や働き方によって大きく異なるのが特徴です。また、平均年収や中央値が低いと言われる中でも、10人に1人は「年収1,000万円以上」を稼いでいることがわかります。

なお、独立開業している行政書士の場合は、クライアントの獲得状況や業務内容によって収入が大きく変動するのも特徴です。

他の士業との比較

他の士業と比較すると、司法書士の平均年収は700万円から900万円程度とされており、行政書士よりも高い傾向があります。一方、社会保険労務士の平均年収は行政書士と同程度の400万円から600万円程度です。

このように、行政書士の年収は、働き方や取り扱う業務内容によって大きく異なります。高収入を目指すためには、専門性の高い業務を取り扱うことや、他の資格と併用することが有効です。

行政書士の年収を上げるための具体的な方法6つ

行政書士の年収を上げるための方法を、以下で具体的に解説します。

1. 専門性を高める
2. 他の資格も取得する
3. 独立開業する
4. マーケティング力を強化する
5. ネットワークを広げる
6. 高単価の業務を得意分野にする

それぞれ解説します。

1.専門性を高める

行政書士が専門性を高めることで、特定の分野での信頼性と需要が増します。また、専門的な知識やスキルを持つことで、他の行政書士との差別化が図れ、高単価の案件を受注しやすくなるでしょう。

例えば、外国人のビザ申請や企業法務に特化することで、その分野での専門家として認知され、依頼が増える可能性があります。

このように、専門性を高めることで、クライアントからの信頼が向上し、収入の増加につながります。

2.他の資格も取得する

行政書士が他の関連資格を取得することで、提供できるサービスの幅が広がります。なぜなら、行政書士だけでなく、司法書士や社会保険労務士などの資格を持つことで、ワンストップで多様なサービスを提供できるようになるからです。

例えば、相続手続きに関する依頼を受ける際に、司法書士の資格も持っていれば、不動産登記まで一貫して対応できるため、クライアントにとって利便性が高まります。

このように、他の資格を取得することでクライアントのニーズに幅広く対応できるようになり、収入の増加に期待ができます。

3.独立開業する

行政書士が独立開業することで、自分のペースで仕事を進めることができ、収入の上限が広がります。なぜなら、ご自分でクライアントを獲得して直接契約することで、収入を最大化できるからです。

例えば、独立開業して自分の事務所を構えることで、地域のニーズに応じたサービスを提供し、固定客を増やすことができます。

このように、行政書士が独立開業することで収入の上限が広がり、自分の努力次第で大きな収入を得ることが可能です。

4.マーケティング力を強化する

行政書士がマーケティング力を強化することで、より多くのクライアントを獲得できます。なぜなら、効果的なマーケティング戦略を立てることで、自分のサービスを広く知ってもらい、依頼を増やせるからです。

例えば、SNSやウェブサイトを活用すれば、ご自分の実績やサービス内容を積極的に発信して、ターゲット層に直接アプローチできます。

このように、行政書士がマーケティング力を強化することでクライアントの数が増え、収入の増加にもつながるでしょう。

5.ネットワークを広げる

行政書士がネットワークを広げることで、紹介やコラボレーションの機会が増えます。なぜなら、他の専門家やビジネスパートナーとのつながりを持つことで、相互に依頼を紹介し合えるからです。

例えば、地元のビジネス交流会や専門家の勉強会に参加することで、名刺交換や情報交換を通じてネットワークを拡大できます。また、ネットワーキングを活用した人脈拡大も可能です。

このように、行政書士がネットワークを広げることで新たなビジネスチャンスが生まれ、収入の増加にも期待ができるでしょう。

6.高単価の業務を得意分野にする

行政書士が高単価の業務を得意分野にすることで、効率的に収入を増やすことができます。なぜなら、高単価の業務に特化することで、少ない案件数でも高収入を得ることが可能だからです。

例えば、企業法務や国際業務など、専門性が高く報酬が高い分野に特化します。

このように、高単価の業務を得意分野にすることで効率的に収入を増やし、経済的な安定を図ることが可能です。

上記の方法を組み合わせることで、行政書士としての年収を効果的に上げることができるでしょう。

行政書士の働き方による年収の違い

行政書士の年収は、働き方によって大きく異なります。以下に、主な働き方とその年収の違いを解説します。

1.企業や行政書士事務所に勤務する場合

企業や行政書士事務所に雇用されて働く場合、年収は約250万円〜600万円程度です。

初年度の年収は250万円ほどから始まることが多いですが、経験を積むことで徐々に増加します。

このように、企業や行政書士事務所に勤務する場合は安定した収入が見込める一方で、独立開業に比べると収入の上限が低い傾向にあります。

2.独立開業する場合

行政書士が独立開業する場合、年収は大きく変動します。

開業初年度は100万円から200万円程度になることが多いですが、成功すれば年収1,000万円以上も可能です。

このように、独立開業はリスクも伴いますが、自分の努力次第で高収入を狙える魅力があります。

3.ダブルライセンスを取得する場合

行政書士が他の資格（例えば、司法書士や社会保険労務士）と併用することで、提供できるサービスの幅が広がり、収入増が期待できます。

実際に、ダブルライセンスを持つ行政書士の年収は、500万円〜1,000万円以上になることもあります。

4.副業として働く場合

副業として行政書士の業務を行う場合、年収は約100万円から300万円程度です。副業することで、本業の収入にプラスアルファとして得られるため、安定した収入を確保しつつ、行政書士としての経験を積むことが可能です。

このように、行政書士の年収は、働き方や業務内容によって大きく異なります。自分に合った働き方を選び、専門性を高めることで、より高い収入を目指すことができるでしょう。

業務内容別に見る行政書士の年収の差

行政書士の年収は、取り扱う業務内容によって大きく異なります。以下に、主な業務内容とその報酬の目安を紹介します。

1.書類作成業務

書類作成業務の主な種類と報酬の相場は次の通りです。

• 契約書の作成：約3万円
• 就業規則の作成：約8万5千円
• 遺産分割協議書の作成：約5万円
• 遺言執行手続き：約24万円
• 知的資産経営報告書の作成：約67万円

このように、書類作成業務は比較的安定した収入が見込めますが、専門性の高い業務（例：知的資産経営報告書の作成）に特化することで、より高い報酬に期待ができます。

2.許認可申請の代理業務

許認可申請の代理業務の主な種類と報酬相場は次の通りです。

• 建設業許可申請：約14万円
• 飲食店営業許可申請：約9万円
• 旅館業許可申請：約20～30万円
• NPO法人設立認証手続き：約15～25万円
• 医薬品製造販売許可申請：約34万円
• 医療法人設立認可申請：約56万円
• 帰化許可申請：約20～30万円

このように、許認可申請の代理業務は、手続きの複雑さや専門性に応じて報酬が高くなる傾向があります。

3.相談業務

相談業務は、主に行政手続きに関する相談を受け付けます。報酬は比較的低めですが、他の業務と組み合わせることで収入を増やすことが可能です。

上記のように、行政書士の年収は取り扱う業務内容によって大きく異なります。そこで、高収入を目指すためには、専門性の高い業務や高単価の業務に取り組むことが重要です。

行政書士の年収を左右する要因とは？

行政書士の年収を左右する主な要因を、以下で解説します。

業務内容と専門分野

行政書士が手掛ける業務の種類や専門分野によって収入が大きく異なります。例えば、企業法務や国際業務などの高単価な業務を扱う場合、収入が高くなる傾向があります。

勤務形態

行政書士として独立しているか、企業や行政書士事務所に勤務しているかによっても年収は異なります。独立して成功すれば高収入を得ることができますが、安定した収入を得るのは難しい場合もあります。

地域差

都市部と地方では依頼の数や案件の規模が異なるため、年収にも差が出ます。都市部では高収入を得やすい環境が整っていますが、地方では依頼が少なく年収が低めになることが多いです。

経験とスキル

経験年数やスキルの高さも年収に影響します。経験豊富でスキルの高い行政書士は、より多くの依頼を受けることができ、高収入を得やすくなります。

兼業

他の資格を持っている場合や、他の職業と兼業している場合も収入に影響します。例えば、司法書士や税理士などの資格を持っていると、業務の幅が広がり、収入も増える傾向があります。

これらの要因を考慮して、自分に合った働き方や専門分野を選ぶことが重要です。

行政書士の年収を上げるためのキャリアパス

行政書士の年収を上げるためには、以下のキャリアパスや戦略が有効です。

専門分野の選定

高単価な業務を扱う専門分野を選ぶことが重要です。例えば、企業法務や国際業務、建設業許可申請などの分野は高収入が期待できます。

ダブルライセンスの取得

行政書士以外にも、司法書士や社会保険労務士などの資格を取得することで、業務の幅が広がり、収入も増える傾向があります。

企業法務部門への転職

事業会社の法務部門に転職することで、安定した高収入を得ることができます。特に大手企業やグローバル企業では、管理職でなくても年収1,000万円を超えることもあります。

コンプライアンス部門への転職

規模の大きい企業では、コンプライアンス部門でのキャリアも考えられます。内部通報対応や社内規程整備などの業務を担当することで、法務部門と同様に高収入が期待できます。

高単価業務の獲得

建設業許可申請や中小企業等協同組合設立認可申請など、高単価な業務を積極的に取り入れることで、収入を増やすことができます。

英語力の向上

特にグローバル企業でのキャリアを目指す場合、高い英語力が求められます。TOEICで800点以上を目指すことで、転職市場での評価が高まります。

これらの戦略を組み合わせて、自分に合ったキャリアパスを選ぶことが重要です。

行政書士の平均年収のまとめ

このように、行政書士の平均年収は、働き方によって大きく変わります。実際に、400万円程度で働く方もいれば、複数の資格を取得することで1,000万円以上の年収を得ている行政書士も多数おられます。

そこで、行政書士の資格を活かせる業界やクライアントを選び、独立・開業すれば、より高い収入を目指すことも可能です。

ただし、行政書士で成功するには、ご自身のキャリアプランを明確に描くことが重要です。

また、行政書士の資格や実務経験を活かして、より条件の良い職場への就職や転職をお考えの方は、ご自身のキャリアプランの策定とともに、これまでのキャリアの棚卸しを行い、ご自分の強みや目標をしっかりと把握しておく必要があります。

そこで、ご自身が目指す業界や職種に特化した転職エージェントに相談して自己分析を行い、ご自身の特徴や強みをしっかりと理解してから就職や転職活動を行いましょう。

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