行政書士試験の難易度は？合格に必要な勉強時間と効果的な学習法を解説

法律関連の知識を問われる行政書士試験の難易度は、司法試験や司法書士試験ほどではないものの、比較的高めです。そのため、合格するためには相当な努力と時間が必要となります。特に、初めて法律を学ぶ方にとっては、さらに難易度が高くなるかもしれません。

しかし、適切な学習方法と計画を立てることで、合格は十分に可能です。そこでまずは、試験の全体像を把握し、どの分野に重点を置くべきかを明確にすることが重要です。

次に、効率的な勉強時間の確保と、理解を深めるための反復学習が求められます。さらに、過去問を活用することで、出題傾向を掴み、実践的な対策を講じることができるでしょう。そこで今回は、行政書士試験の難易度、合格に必要な勉強時間、そして効果的な学習法について徹底解説します。これから司法書士を目指す方はもちろん、興味のある方も、ぜひ参考にしてください。

行政書士試験の難易度は？合格率の推移も確認

行政書士試験は、国家資格の中でも難関とされています。試験の合格率は例年10%前後で推移しており、近年の合格率は以下の表の通りです。

出典：モアライセンス　より

上記のように、直近の5年間の合格率を見ても、おおよそ10％程度の低い値が並んでいます。

過去5年の具体的な合格率は、次の通りです。

• 令和5年度：13.98%
• 令和4年度：12.13%
• 令和3年度：11.18%
• 令和2年度：10.7%
• 令和元年度：11.5%

上記の結果から見ても、行政書士試験の難易度は、比較的高いと言えるでしょう。特に、法律や行政に関する知識が求められるため、合格を目指す際にはしっかりとした学習計画と十分な勉強時間が必要です。

なお、行政書士の試験に独学で挑む場合には、約800〜1,000時間程度の勉強が目安とされています。

行政書士試験の受験科目と内容を解説

行政書士試験の受験科目は大きく分けて「法令科目」と「基礎知識科目（旧：一般知識等科目）」の2つに分類されます。以下では、それぞれの科目と内容について解説します。

法令科目

行政書士試験の法令科目は、行政書士としての業務に必要な法律知識を問う重要な部分です。

以下に、法令科目の詳細を解説します。

試験科目と出題形式｜各科目の特徴と対策

法令科目は以下の5つの分野から出題されます。

1. 基礎法学
2. 憲法
3. 行政法
4. 民法
5. 商法

これらの科目は、5肢択一式、多肢選択式、記述式の3つの形式で出題されます。

1.基礎法学

基礎法学の分野では、法律の基本的な概念や原理を学びます。

基礎法学分野の有効な試験対策としては、過去問を通じて出題傾向を把握し、基本的な法律用語や概念を理解することが重要です。

2.憲法

憲法の分野では、人権や統治機構に関する規定を学びます。

憲法分野では、 人権分野は判例を、統治分野は条文を中心に学習しましょう。難易度が比較的低いため、確実に得点を狙いたい科目です。

3.行政法

行政法の分野では、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法など、行政に関する法律を学びます。

行政法分野の試験は条文知識が中心で、学習量に比例して得点が伸びやすい科目です。配点も大きいため、重点的に学習しましょう。

4.民法

民法分野では、契約や不法行為など、私法の基本を学びます。

民法分野の試験対策としては、条文と判例の双方に焦点を当て、事例問題で実戦的な知識を身につけましょう。学習範囲が比較的広いため、計画的に学習を進めることが重要です。

5.商法

商法分野では、会社法を含む商取引に関する法律を学びます。

商法の試験は、出題範囲が広く、難易度が高い科目です。基礎的な問題を確実に押さえ、得点しやすい部分に集中しましょう。

法令科目の合格基準

法令科目の合格基準は、総得点の80%以上を占めるため、この科目でしっかりと点数を取ることが必要です。具体的には、244点中122点以上を得点することが求められます。

法令科目の効率的な学習方法

法令科目の効率的な学習方法は、過去問の演習を通じて試験の傾向と特徴をしっかりと理解することです。出題傾向を把握し、実戦的な問題に慣れるようにしましょう。

また、条文と判例の理解も合格に必要な知識です。特に民法と行政法では、条文と判例の双方をしっかりと学習しましょう。

上記のように、行政書士試験は学習範囲が広いため、計画的に学習を進めることが合格のポイントです。

基礎知識科目（旧：一般知識等科目）

行政書士試験の基礎知識科目は、2024年度から「一般知識等」から「基礎知識」に改正されました。

この科目は、行政書士として必要な幅広い知識を問うもので、以下の4つの分野から構成されています。

1.一般知識

一般知識とは、政治・経済・社会に関する知識を問う分野です。中学校や高校で学ぶ社会科の内容や、時事問題が出題されます。 

一般知識試験は出題範囲が広いため、「浅く広く」学ぶことが重要です。特に、日本の選挙制度や貿易の自由化など、よく出題されるテーマを押さえましょう。ニュースアプリなどで日常的に時事問題に触れる習慣をつけるのもおすすめです。

2.行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令

行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令の試験では、行政書士法、戸籍法、住民基本台帳法など、行政書士業務に直接関連する法律が出題されます。 

行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令の試験対策としては、平成17年以前の過去問を解くことが有効です。最新のテキストや予想問題を使用し、条文を中心に学習しましょう。特に行政書士法は条文数が少なく、学習しやすい分野です。

3.情報通信・個人情報保護

情報通信・個人情報保護では、IT用語や情報通信に関連する法律の知識が問われます。これには、個人情報保護法、情報公開法、公文書管理法、プロバイダ責任制限法などが含まれます。 

情報通信・個人情報保護の試験対策としては、過去問や模試の問題を繰り返し解き、IT用語とその定義を知識として定着させることが重要です。暗記が効果的な科目であるため、重点的に取り組みましょう。

4.文章理解

文章理解は、文章を正しく理解できているかを問う科目です。空欄問題、内容合致問題、並べ替え問題などが出題されます。 

文章理解試験の対策としては、できるだけ多くの問題を解くことが重要です。模試や予想問題、公務員試験の過去問なども活用し、さまざまな問題に触れることが効果的です。毎日数問ずつ解く習慣をつけましょう。

基礎知識科目の足切り対策

基礎知識科目には足切りがあり、一定の点数に達しないと不合格となります。各科目でバランスよく得点を取ることが重要です。

行政書士試験の形式と配点

行政書士試験は、以下の形式と配点で構成されています。

試験形式

• 5肢択一式は、1問につき4点
• 多肢選択式は、1問につき8点
• 記述式は、1問につき20点

配点

• 法令科目 (合計244点)

  • 基礎法学は、2問 (8点)
  • 憲法は、6問 (28点)
  • 行政法は、22問 (92点)
  • 民法は、11問 (76点)
  • 商法・会社法は、5問 (20点)

• 基礎知識科目 (合計56点)

  • 政治・経済・社会は、7問 (28点)
  • 情報通信・個人情報保護は、4問 (16点)
  • 文章理解は、3問 (12点)

合格基準

• 法令科目で122点以上
• 基礎知識科目で24点以上
• 合計で180点以上 (全体の6割以上)

また、試験は毎年11月の第2日曜日に行われ、受験資格は特にありません。

行政書士試験の効率的な勉強法と勉強時間の目安

行政書士試験に合格するための勉強時間の目安は、一般的に800～1,000時間とされています。ただし、これは、独学での勉強を想定した時間です。

以下に、効率的な勉強方法と時間配分の例を紹介します。

効率的な勉強方法｜4つのコツ

行政書士試験の効率的な勉強法には、次の4つのコツがあります。

1. 計画を立てる
2. 基礎を固める
3. 過去問を解く
4. 模擬試験を受ける

それぞれ解説します。

1.計画を立てる

効率的な勉強のためには、まず計画を立てることが重要です。計画を立てることで、学習の進捗を管理しやすくなり、無駄な時間を減らすことが可能です。

例えば、試験日から逆算して、毎週の学習目標を設定しましょう。各科目の重要度や自分の得意・不得意を考慮して、バランスよく時間を配分することが大切です。

計画を立てることで、効率的に学習を進めることができ、試験に向けての準備が整います。

2.基礎を固める

基礎を固めることは、全ての学習の土台となります。基礎がしっかりしていないと、応用問題や実践的な問題に対応できません。

例えば、憲法や民法の基本的な条文や概念をしっかりと理解し、暗記することから始めると良いでしょう。基礎知識がしっかりしていると、応用問題も解きやすくなります。

基礎を固めることで、試験全体の理解度が深まり、得点力が向上します。

3.過去問を解く

過去問を解くことは、試験対策において非常に効果的です。なぜなら、過去問を解くことで、出題傾向や頻出問題を把握できるからです。

例えば、過去5年分の問題を解いてみることで、どの分野がよく出題されるか、どのような形式で出題されるかを理解できます。また、解答解説を読み込むことで、自分の弱点を補強できるでしょう。

このように、過去問を解くことで実際の試験に近い環境で練習でき、自信を持って本番に臨むことができます。

4.模擬試験を受ける

模擬試験を受けることは、試験本番のシミュレーションとして非常に有効です。模擬試験を受けることで、時間配分や試験の流れを体感することができます。

例えば、模擬試験を定期的に受けることで、自分の実力を客観的に評価し、改善点を見つけることが可能です。また、模擬試験の結果をもとに、学習計画を見直すことも重要です。

このように、模擬試験を受けることで本番の試験に対する不安を軽減し、ご自身の実力を最大限に発揮できるでしょう。

時間配分の例（8〜11ヶ月計画）

行政書士試験を受験する学習計画を立てる際には、次の勉強時間配分を参考にしてください。

基礎知識の習得（最初の3～4ヶ月）

1日2～3時間の勉強を目安に、基礎知識をしっかりと身につけます。

過去問演習（次の3～4ヶ月）

1日3～4時間の勉強を目安に、過去問を繰り返し解きます。解説を読み、理解を深めることが重要です。

模擬試験と総復習（最後の2～3ヶ月）

1日4～5時間の勉強を目安に、模擬試験を受けながら総復習を行います。弱点を補強し、試験本番に備えましょう。

行政書士試験の難易度のまとめ

このように、行政書士になるためには、比較的難易度の高い国家試験に合格する必要があります。しかし、行政書士の資格を取得すれば、独立・開業するなどして高収入を目指すことも可能です。

ただし、行政書士で成功するには、ご自身のキャリアプランを明確に描くことが重要です。

また、行政書士の資格や実務経験を活かして、より条件の良い職場への就職や転職をお考えの方は、ご自身のキャリアプランの策定とともに、これまでのキャリアの棚卸しを行い、ご自分の強みや目標をしっかりと把握しておく必要があります。

そこで、ご自身が目指す業界や職種に特化した転職エージェントに相談して自己分析を行い、ご自身の特徴や強みをしっかりと理解してから就職や転職活動を行いましょう。

信頼のできる転職エージェントのサポートを受けながら転職活動を進められれば、就職や転職に関する悩みを解消できるだけでなく、自己分析やヒアリングを通して、自分の向いている本当の職種に気付けるかもしれません。

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