一人親方は法人化すべき?メリット・デメリットや適切なタイミングを解説
職人・一人親方現在一人親方として働いている方の中には、法人化を考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし「自分が法人化すべきなのか?」や「どのタイミングですればいいのか?」など、さまざまな疑問を抱えている方も多いはず。
そこで、この記事では一人親方が法人化するメリット・デメリットや適切なタイミングについて詳しく解説します。
法人化する際の具体的な流れも解説するので、法人化に悩まれている方はぜひ参考にしてください。
一人親方の法人化とは?
一人親方の法人化とは、個人としての事業を廃止して、法人として新たに会社を設立することです。
法人化すると、今まで築いてきた資産や顧客を新しい会社に引き継ぐことができます。 ただし、法人化することで、税金や経費、事務作業などにも変化があります。
そこで、一人親方が法人化することのメリットやデメリットを知っておくことが大切です。 また、法人化するタイミングも重要となります。
法人化するときには、所得や売上、事業拡大などの要素を考慮しなければなりません。 そこで以下では、これらの点について詳しく説明します。
一人親方が法人化する5つのメリット
最初に、一人親方が法人化するメリットについて解説していきます。
主なメリットは、
- 仕事を受けやすくなる
- 融資が受けやすくなる
- 税制面の法的優遇措置がある
- 事業承継がしやすい
- 万一の時に個人に返済責任がない
以上5つになります。それぞれ詳しくみていきましょう。
1.仕事を受けやすくなる
法人化することで、個人事業主と比べると仕事が受けやすくなります。
それには、
- 業務の幅が広がるから
- 信頼性が上がるから
という二つの理由があります。
基本的に自分一人でしか仕事をできない一人親方に対して、法人化することで従業員を雇うことができるので、扱える工事の規模が大きくなり、業務の幅が広がります。今までは自分でする必要のあった経理なども任せられるようになり、より自分の仕事にコミットできるようになります。
また、法人と各種の法制度の下で設立されているので、個人事業主とは取引しない会社とも取引できるようになるなど、受けられる仕事が増えます。このように一人親方に比べて仕事がやりやすくなるのが法人化のメリットの一つです。
2.融資が受けやすくなる
仕事が受けやすくなる理由の二つ目とほぼ同じですが、仕事だけでなく、融資が受けやすくなるのも利点です。法人というのは会社法などの法律に基づいて作られているので、融資する金融機関からの信頼も厚く、個人事業主に比べるとかなり融資が受けやすくなります。大きなお金がかかるような案件でも受けられるようになるので、事業規模の拡大が見込めます。
3.税制面の法的優遇措置がある
法人化した場合、税金のかかり方が個人事業主とは大きく異なり、個人事業主では所得税がかかりますが、法人を設立すると法人税がかかるようになります。法人として会社を設立すると個人事業主とは違って、自分の給料分を引いた額に税金がかかることになります。
役員報酬である自分の収入も経費に加えたうえで税金を引かれるうえ、利益が900万円以上ある場合は税率も所得税より低くなるので、手取りが増えます。また、赤字の繰越期間についても個人事業主は3年なのに対し、法人の場合は最長で10年間繰り越せて、その面でも優遇があるので年収によっては法人化を考えましょう。
4.事業承継がしやすい
個人事業主には基本的に事業継承という概念が存在しません。なぜなら法律上、法人と個人事業主は主体としての概念が異なるからです。さらに詳しい理由については少し難しいので割愛しますが、手続きとしては個人事業主の場合、一度自分が廃業届を出してその後、後継者に事業を任せることになります。
その際の事業用の資産は個人のものなので、個人間で贈与するといった形になり、手続きが煩雑になります。法人の場合はそれらの資産は法人のものなのでそういった手続きは必要なく、経営権の譲渡などの手続きだけで済むので、スムーズに事業継承することができます。
5.万一の時に個人に返済責任がない
これも法律的な概念の話になるのですが、法人の場合は個人に対して返済責任がありません。個人事業主の場合はお金の借り入れは個人に対して返済責任が生じますが、法人の場合はあくまで法人の借金であり、社長個人の借金ではないので、個人に対する返済責任はありません。
ただし、社長が連帯保証人になっている場合や、会社が合名会社か合資会社である場合は社長にも支払い義務があるので、一概に返済義務がないわけではないので、注意してください。
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一人親方が法人化する4つのデメリット
法人になることにはメリットだけでなく、もちろんデメリットもあります。デメリットとしては、
- 高額な社会保険料を支払わないといけない
- 法人設立の費用・手間がかかる
- 赤字決算でも住民法人税の支払いが必須
- 会計処理等の事務手続きが増加する
という4つが挙げられます。こちらもそれぞれ詳しく解説していきましょう。
1.高額な社会保険料を支払わないといけない
法人化することで、社会保険料の負担が増加します。個人事業主の場合は自分の健康保険と国民年金だけでよかったかもしれませんが、法人の場合は社会保険料は社員と会社が折半して支払う形になりますので、従業員の数だけ、保険料が増加することになります。一般的には月給の15%程度は会社が負担することになるので、そうした保険料の増加も計算したうえで法人化する必要があります。
2.法人設立の費用・手間がかかる
法人化は各種法制度に則って行うため、それなりに手間がかかります。印紙税や定款認証にかかる手数料などがかかり、おおよそ25万円程度かかります。特に登録免許税は資本金の0.7%ですが、下限が15万円と決まっているので、かなりお金がかかります。こうした手間や費用を考えて法人化するようにしましょう。
3.赤字決算でも住民法人税の支払いが必須
個人事業主は赤字であれば所得税や住民税はかかりませんが、法人の場合はどのような状況でも住民税を支払う必要があります。赤字であっても最低7万円の住民税を支払う必要があるので、注意しましょう。
ただし赤字の場合は法人税はかからず、次の年に赤字分を繰り越すことができます。次の年の利益から赤字を引いた分が課税対象になるので、その点に関しては法人のほうが有利だともいえます。
4.会計処理等の事務手続きが増加する
法人化することで事務手続きが大幅に増加します。個人事業主よりも税金の申告が複雑になるので、ご自身が現場に行って仕事を行う場合は経理の担当者を雇うか、税理士などに依頼する必要があるでしょう。
最近では決まった通りに入力するだけで申告ができるソフトなどもありますが、知識がないままそうした申告などを行うと、払うべきお金が払えなかったり、受けられるはずの控除が受けられなかったりするので、一度専門家に相談するのが良いと考えます。
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一人親方が法人化をする適切なタイミング
ここまではメリットやデメリットに関して説明してきたので、ここからは実際に法人化するタイミングについてご紹介します。
売上が1000万を超えたとき
個人事業主の場合、売上が1000万円を超えると消費税の支払い義務が生じます。それに対し法人の場合は納税する前々年度の課税売上高が1000万円を超える場合に納税義務が生じます。
そのため、法人設立後2年間は消費税が免除されるので、法人化に良いタイミングだといえるでしょう。
従業員を採用したいと考えている時
従業員を雇いたいと思ったときに、個人事業主のもとには人が集まりづらく、法人のほうが採用しやすくなります。またそれだけでなく従業員を採用すると、今までの労災保険が使えなくなり、中小企業用の労災保険に加入する必要が出てきます。
さらに、従業員の社会保険料も一部負担する必要が出てくるので、法人化するのとあまり変わらない費用が掛かることになります。従業員を雇いたいというほど事業が大きくなっているのであれば、税制面でのメリットがある法人化する方が良いでしょう。
社会保険に加入したくなった時
個人事業主の場合、国民年金ではなく、厚生年金に加入することができます。そのため、老後のリスクを軽減できるようになります。また、労災保険等も中小企業の事業主向けのものがあるのでそちらに加入することができます。
個人事業主の場合、社会保険などの制約が大きいので、法人化することで保険面の恩恵が得られます。特に従業員を雇っている場合は、法人化したほうが、そうした制度の恩恵をより受けることができるので、検討してみてください。
課税所得が多くなった時
課税所得が900万円を超えると、法人税と所得税の税率がそれほど変わらなくなります。その場合は法人化することで課税額を減らすことが可能です。
ただしこの法人税は役員報酬を含めた経費を売り上げから引いたものにかかってくるので、自分への役員報酬は通常の所得税になります。自分の報酬を多くしすぎると今度は所得税がたくさんかかってしまうことになるので、注意してください。
一人親方が法人化するときの会社形態
一人親方が法人化するときの会社形態としては、株式会社と合同会社の2種類があります。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分の事業内容や目的に合わせて選ぶことが重要です。
そこで以下では、株式会社と合同会社の違いと特徴を解説します。
株式会社
株式会社とは、株式を発行して資金を集めることができる会社形態です。
株式会社は、社会的な信用度が高く、税金や経費の節税メリットがあります。しかし、設立費用や手続きが多くかかりますし、決算公告の義務があります。
また、出資額に応じて利益配分が決まるのが特徴です。
株式会社の特徴をまとめると、以下のようなものがあります。
- 株式を発行して資金を集めることができる
- 社会的な信用度が高い
- 税金や経費の節税メリットがある
- 設立費用や手続きが多くかかる
- 決算公告の義務がある
- 出資額に応じて利益配分が決まる
合同会社
一方、合同会社とは、出資者が共同で事業を行う会社形態です。
合同会社は、設立費用や手続きが少なく済みますし、決算公告の義務がありません。また、利益配分の基準を自由に決められます。
しかし、株式会社に比べて知名度が低く、資金調達の方法が限られます。また、社員同士が対立する可能性があるため、注意が必要です。
合同会社の特徴をまとめると、以下のようなものがあります。
- 設立費用や手続きが少なく済む
- 決算公告の義務がない
- 利益配分の基準を自由に決められる
- 株式会社に比べて知名度が低い
- 資金調達の方法が限られる
- 社員同士が対立する可能性がある
以上が、株式会社と合同会社の違いと特徴です。一人親方が法人化するときには、自分の事業内容や目的に合わせて、適切な会社形態を選ぶことが大切です。
一人親方が法人化するまでの流れ
法人化するタイミングまでわかったところで、実際に法人化するまでの流れについて簡単に紹介します。
①基本事項の決定
最初に設立する法人の種類を決める必要があります。法人には合名会社・合資会社・合同会社・株式会社の4種類があります。その中でも、合同会社、株式会社に関しては出資者の責任が有限であり、会社が大きな負債を負った際にも個人に返済する義務がない為、よく選ばれています。重要な基本事項を5つ挙げておきます。
- 商号:会社名。法律上、他社の権利を侵害しないように気をつける必要がある。
- 本店:建設業は許認可業種なので、本店所在地として問題ないか事前確認が必要。
- 目的:定款や会社の登記簿謄本に記載されるもので、建設業の許認可に必要な目的を入れる必要がある。
- 資本金:1円以上あれば良いですが、あまりに少なすぎると会社としての信頼が薄れることがある。
- 決算日:決算日は消費税免除の期間の都合上、会社設立日の前月末日にするのが一般的。
②個人の実印と印鑑証明の取得
法人設立の書類には代表者の実印が必要になるので、準備する必要があります。今後の手続きをスムーズに行うためにもなるべく早く準備しておく方が良いでしょう。
③法人設立届出書
会社を設立したことを税務署に知らせるための書類。税務署や地方自治体に税金を納めるために必要で、会社設立の日から2か月以内に提出することが定められています。様式はインターネットでダウンロードすることが可能です。
④会社の実印の作成
会社に必要な印鑑は会社の実印、角印、銀行印が必要。実印とは会社の意思決定に必要な印鑑で、日常的に使うものではないものの、会社の契約など重要な事項の意思決定などの際に使うことがあります。角印は各種書類に会社として押すもので、認印のように使われることが多いです。
角印は実印とは違って日常的に使うものなので、必要に応じていくつか作るのがおすすめです。銀行印は銀行の法人口座用の銀行印のこと。3つとも必要なので準備を忘れずにする必要があります。
⑤定款の作成と認証
会社の定款とは会社の基本的事項を定めたもので、絶対的記載事項に関しては漏れなく記入し作成後、提出し所定の役所で認証を受ける必要があります。
⑥資本金の払い込み
代表者の口座に資本金を振り込みます。法人の口座はできていないので、個人用口座に振り込む形で問題はありませんが、登記申請書に添付する必要があるため、払い込みが分かる通帳のページをコピーをとっておく必要があります。
⑦登記登録書の作成と登記申請
法務局で法人設立登録をする必要があります。法人設立登記は法務局の公式のサイトからオンラインで申請することが可能です。
弊社では、数多くの建設業者様に工事案件を獲得していただいています。ベテランに限らず、業歴浅い業者様にも長期の高単価案件をご紹介できます。
- 長期契約可能な工事案件多数
- 設立1年目の建設業者様でも応募可能な案件
- 無料登録から最短1日でお仕事紹介
まずは無料登録をして色々な案件を見てみてください。専門エージェントからおすすめの工事案件をご紹介することも可能です。
一人親方が法人化する際に注意すべきにあたってのポイント
法人化する際にはいくつか注意点がありますので、簡単に紹介していきます。
建設業許可と登記
建設業の法人化には建設業許可が必要です。建設業は業種が分かれているので、業種ごとに許可をとらなければなりません。
専任技術者が必要になりますので、もし自分が辞めるときにはその変更も必要になります。専任技術者を変更する必要が出てきた際には一定期間内に変更届を提出する必要があります。しかしこの変更のタイミングによって、必要な専任技術者がいない期間があると、建設業許可が失効してしまうので注意しましょう。
資本金は500万以上がおすすめ
建設業許可には500万円以上必要な一般建設業と2000万円以上必要な特定建設業の2種類ありますが、一人親方が法人化する際には通常一般建設業なので500万円は用意しておきましょう。
500万円が準備できない場合でも、一時的に他の人から借りて残高を500万円以上にできた通帳のコピーがあれば建設業許可を受けられます。資本金は1000万円を超えてしまうと、消費税の免除が受けられなくなりますので注意してください。
社会保険への加入義務
法人化すると社会保険への加入が必要です。一人親方の方であれば労災保険の特別加入ができたかもしれませんが、法人化した場合は経営者は労災保険の対象とならないので、中小企業の事業主向けの労災保険に入る必要があります。また従業員の社会保険も折半して払う必要があるのでその点も注意してください。
法人化を済ませ高度な案件を受注するために
近年、一人親方に対する規制はより厳しくなっているので、今後案件の受注が非常に難しくなることも予想されます。そのため個人事業主として一人親方を続けていくと、税制面などで経営が厳しくなっていきます。本当にこの先何十年も建設業界で独立して働くためには法人化するのが最も良い方法だと考えます。
とはいっても法人として働き始めたばかりのときはどのようにして大きい依頼を受けられるのかわからないこともあると思います。そういった場合にはフリーランスエージェントを活用するのが案件獲得の近道になります。
ビーバーズでは建設業界に特化した建設業界に特化したフリーランスエージェントサービスを行っています。建設会社の経営者と条件の相談などができ、案件受注後もサポートがあるので、安心して案件を受注できます。法人化した後の不安なども相談することができるので是非ご活用ください。
2023年から施行されるインボイス制度
インボイス制度とは、事業者間の取引にかかる消費税を正確に把握するための制度です。
インボイス制度では登録された適格請求書発行事業者により発行された適格請求書がなければ消費税控除が受けられません。
一人親方のままではこの適格請求書が発行できず、発注者側が一人親方に仕事を発注しても消費税の控除ができないために、依頼を減らすことが予想されます。
法人化するか迷っている方は、今後依頼が減る可能性も考慮しながら、取引先と相談の上で法人化に向けて動くことが重要です。
まとめ
今回は一人親方が法人化する際のメリットやデメリット、流れなどについて詳しく解説しました。法人化は一人親方として独立するよりもハードルが高く、計画がないまま法人化するとかえって費用がかさんでしまうこともあります。
法人になる際には約30万円のお金がかかり、従業員の社会保険料も支払う必要があるので、しっかりと経費を計算したうえで法人化するかどうかを決める必要があります。一人親方として受注できる工事には制限があり、事業を拡大していきたい場合には法人化する以外方法はありません。
法人化することで税制面での優遇が受けられ、請け負う工事の規模も大きくなるので、利益は一人親方よりも多くなります。いろいろなことを考慮したうえで法人化する際には、しっかりとした手続きを踏んだうえで、将来への明確なビジョンを持つようにしましょう。