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特定建設業とは?許可要件と義務、取得のメリットや一般建設業との違いも解説
建設業界で事業を展開する上で、適切な建設業許可の取得は不可欠です。中でも「特定建設業」は、大規模な工事や下請け契約を行う際に必要となる重要な許可です。
一般建設業とは異なる要件や義務が課せられるため、その違いを理解することが重要です。
そこで本記事では、特定建設業の定義や許可要件、事業者に課せられる義務について詳しく解説します。
さらに、特定建設業許可を取得するメリットや、一般建設業との違いについても分かりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてください。
特定建設業の定義と概要
特定建設業許可とは
特定建設業許可は、特定建設業を営むために必要な行政許可のことです。この許可を取得するには、一定の経営基盤、技術力、財務健全性が求められます。
特定建設業許可を取得した企業は、大規模な工事を請け負う資格を持ち、高い信頼性と能力を示すことができます。
特定建設業が必要となるケース
特定建設業が必要となるケースは、工事の請負金額が一定額を超える場合や、公共工事、重要インフラ工事などの特定の条件を満たす工事を行う場合です。
これらの工事は、規模や責任が大きいため、特定建設業の許可を持つ企業のみが担当できます。
特定建設業と一般建設業の基本的な違い
特定建設業と一般建設業の基本的な違いは、請け負う工事の規模と許可要件にあります。
特定建設業は大規模な工事を対象とし、厳しい許可要件が課せられる一方、一般建設業は比較的小規模な工事を対象とし、許可要件も比較的緩やかです。
特定建設業の企業は、より高い技術力と管理能力が求められます。
特定建設業許可の取得要件
経営業務管理責任者の設置
特定建設業許可を取得するためには、経営業務管理責任者の設置が必要です。
この責任者は、一定の実務経験と専門知識を持ち、経営業務の管理に精通している必要があります。これにより、企業全体の経営と業務運営が適切に行われることが保証されます。
専任技術者の配置
特定建設業許可を取得するには、専任技術者を配置することが必要です。
この技術者は、一定の資格や実務経験を有し、工事現場の技術的指導や管理を行います。
専任技術者の存在は、工事の品質と安全性を確保するために重要です。
財産的基礎の要件
特定建設業許可を取得するためには、企業が健全な財産的基礎を持つことが求められます。
具体的には、一定の自己資本や純資産を保持し、安定した経営基盤を有することが条件ですす。
これにより、工事の遂行に必要な資金が確保され、安定した事業運営が可能となります。
誠実性と社会保険加入の義務
特定建設業許可を取得するには、企業が誠実に業務を遂行することが求められます。また、労働者に対する社会保険の加入も義務付けられています。
これにより、労働者の権利が守られ、公正な労働環境が維持されます。
誠実な業務運営と適正な社会保険加入は、企業の信頼性を高めるための重要な要素です。
欠格要件に該当しないこと
特定建設業許可を取得するためには、次の欠格要件に該当しないことが条件です。
欠格要件には、過去に一定の違反歴がある場合や、不正な業務運営が確認された場合が含まれます。欠格要件に該当しないことで、企業は適正に許可を取得し、業務を行うことが可能です。
主な要件を以下にまとめます。
主な欠格要件
- 破産者で復権していない者
- 精神機能障害により建設業を適正に営めない者
- 不正手段で許可を受け取り消された者(取り消しから5年未経過)
- 営業停止処分を受け、その期間が経過していない者
- 禁錮以上の刑に処せられた者(刑の執行終了から5年未経過)
- 特定の法律違反で罰金刑を受けた者(刑の執行終了から5年未経過)
- 対象法律:建設業法、建築基準法、労働基準法など
- 暴力団員または暴力団員でなくなってから5年未経過の者
- 暴力団員等が事業活動を支配している者
注意点
- 役員、使用人(支店長など)、個人事業主本人、支配人が上記に該当する場合も欠格要件となります。
- 執行猶予中も欠格要件に該当します。
- 許可取得後に欠格要件に該当した場合、許可取り消しの対象となります。
これらの要件に該当する場合、特定建設業許可を取得することはできません。また、既に許可を持っている場合は、取り消しの対象となる可能性があるため、注意が必要です。
弊社は、建設業界特化の総合ソリューション企業として、人材紹介から事業承継型M&A仲介など、経営に関するあらゆるお悩みを解決いたします。
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特定建設業者に課せられる義務
施工体制台帳の作成と管理
特定建設業者は、施工体制台帳を作成し、適切に管理しなければなりません。
施工体制台帳には、工事の概要、関係する業者、工程管理、品質管理、安全対策などを詳細に記載する必要があります。これにより、工事の全体像を把握し、適正な施工管理が行われることが保証されます。
また、監督官庁による監査や確認が容易となるため、法令順守の観点からも重要です。
下請負業者への法令遵守指導
特定建設業者は、下請負業者に対して、法令遵守の指導を行う義務があります。これには、労働安全衛生法や建設業法などの法令に基づく適切な作業手順の指導が含まれます。
適切な指導を行うことで、下請負業者の法令違反を未然に防ぎ、全体として安全で健全な工事環境を維持することが可能です。
下請代金支払いの特例
特定建設業者は、下請代金の支払いに関して特例が設けられています。
具体的には、工事が完了した日から60日以内に下請代金を支払う義務です。
この特例は、下請負業者が安定した経営を維持するために重要であり、特定建設業者はこれを遵守することで、下請負業者との信頼関係を築きます。
監理技術者の設置義務
特定建設業者は、工事現場に監理技術者を設置する義務があります。
監理技術者の役割は、工事の技術的指導と品質管理を担当し、安全で高品質な工事の実現をサポートするために重要です。
監理技術者の存在により、工事が適切に進行し、法令や規則を遵守した施工が保証されます。
特定建設業許可を取得するメリット
大規模工事の受注機会拡大
特定建設業許可を取得すると、大規模な建設工事や公共工事を受注する機会が広がります。
これにより、企業の事業範囲が拡大し、売上増加や成長の機会を得ることが可能です。
また、許可を持つことで、より高額な工事案件にも対応できるため、企業の競争力が向上します。
社会的信用の向上
特定建設業許可を取得することで、企業の信頼性と社会的信用が向上します。
この許可は、厳しい基準をクリアした企業に与えられるため、取引先や顧客からの信頼を得ることができます。
信頼性の向上は、継続的な取引関係の構築や新規顧客の獲得にも寄与するでしょう。
金融機関からの融資の優位性
特定建設業許可を取得することで、金融機関からの融資を受ける際に有利になります。なぜなら、許可を持つ企業は、安定した経営基盤と高い信頼性を示すことができるため、金融機関は安心して融資を実行できるからです。
これにより、必要な資金調達が容易になり、事業拡大や設備投資がスムーズに行えるでしょう。
特定建設業と一般建設業の詳細な比較
以下では、特定建設業と一般建設業を比較します。
項目 | 特定建設業 | 一般建設業 |
---|---|---|
下請契約の金額制限 | 制限なし | 4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満) |
元請としての工事 | 可能 | 可能(ただし下請契約金額の制限あり) |
下請としての工事 | 可能 | 可能 |
専任技術者の要件 | より厳格(例:一級資格や指導監督的実務経験が必要) | 比較的緩和(二級資格でも可能) |
財産的基礎 | より厳格(4つの要件をすべて満たす必要あり) | 比較的緩和 |
資本金要件 | 2,000万円以上 | 規定なし |
自己資本要件 | 4,000万円以上 | 規定なし |
流動比率 | 75%以上 | 規定なし |
欠損制限 | 資本金の20%以下 | 規定なし |
許可される工事規模の違い
特定建設業は、大規模な工事や重要なインフラ工事を請け負うことが許可されており、工事の総額が一定金額以上の場合に必要です。一方、一般建設業は比較的小規模な工事を対象とし、許可される工事の規模が特定建設業に比べて限定されています。
専任技術者要件の差異
特定建設業では、専任技術者の配置が厳格に求められます。専任技術者は高い専門知識と実務経験を有しており、工事の技術指導と品質管理を担当します。一般建設業でも専任技術者の配置が必要ですが、求められる資格や経験の基準が特定建設業に比べて緩やかです。
財産的基礎要件の比較
特定建設業許可を取得するためには、企業が健全な財産的基礎を持つことが求められます。具体的には、一定の自己資本や純資産を保持し、安定した経営基盤を有することが条件です。一方、一般建設業でも財産的基礎は必要ですが、要求される基準が特定建設業よりも低く設定されています。
課せられる義務の違い
特定建設業には、施工体制台帳の作成や監理技術者の設置など、厳格な義務が課せられているのが特徴です。また、下請負業者への法令順守指導や下請代金支払いの特例もあります。一般建設業でも法令順守が求められますが、特定建設業に比べて義務の範囲や内容が緩和されています。
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特定建設業許可の申請手続き
必要書類の準備
特定建設業許可の申請には、さまざまな必要書類が求められます。これには、経営業務管理責任者や専任技術者の資格証明書、財務諸表、法人登記事項証明書、事業計画書などが含まれます。
これらの書類は、申請者の経営基盤や技術力を証明するために必要です。提出前に正確かつ完全に準備することが重要です。
申請先と申請方法
特定建設業許可の申請は、申請者の所在地を管轄する都道府県の建設業担当部門へ提出します。申請方法は、郵送または窓口での提出が一般的です。
事前に各都道府県のホームページで申請書類のフォーマットや提出方法を確認し、必要な手続きを把握することが重要です。
申請の流れ
具体的な申請の流れを以下で解説します。
要件の確認
1.技術者要件
1級の国家資格を持つ技術者の確保
財産的要件の確認
- 欠損が資本金の20%以下
- 流動比率75%以上
- 資本金2,000万円以上
- 自己資本4,000万円以上2
2.必要書類の準備
- 建設業許可申請書
- 役員などの一覧表
- 営業所一覧表
- 専任技術者一覧表
- 工事経歴書
- 財務諸表
- その他必要書類
3.申請書の作成と提出
「般特新規申請」として申請(一般から特定への変更は新規扱い)
4.手数料の支払い
5.審査と許可取得
注意点
- 一般建設業許可を持っていなくても、直接特定建設業許可を取得することが可能です
- 財産的要件を満たすために、資金調達や決算期変更などの対策が必要な場合があります
- 技術者の常勤性や経験の証明が重要です
申請のポイント
- 複数の変更届(決算変更、技術者変更、本店所在地変更など)と同時に申請することも可能です
- 急ぎの場合は、決算期の前倒しなどの工夫も検討しましょう
- 複雑なケースでは、専門家(行政書士など)に相談することが推奨されます
特定建設業許可の申請は複雑な手続きを要するため、要件を十分に理解し、必要な準備を整えた上で申請することが重要です。
申請先
特定建設業許可の申請先は、申請者の本店所在地によって異なります。全国の申請先は以下のように分類されます。
国土交通大臣許可
2つ以上の都道府県に営業所がある場合は、本店所在地を管轄する地方整備局等の建政部建設業課に申請します。
都道府県知事許可
1つの都道府県内にのみ営業所がある場合は、各都道府県の建設業許可担当部署(例:建設部建設業課)に申請するのが一般的です。
詳しくは、国土交通省のWebサイトから検索してください。
審査プロセスと期間
申請が受理されると、担当機関により審査が行われます。
審査プロセスには、書類の確認や現地調査、面接などが含まれることがあります。
審査期間は通常、数か月から半年程度かかることが多いです。
審査結果は、正式な許可通知書として申請者に送付されます。
許可後の更新手続き
特定建設業許可は、一定期間ごとに更新手続きが必要です。
更新手続きには、新たに必要な書類の準備や審査が含まれます。
通常、更新期間は5年であり、期限内に適切な手続きを行うことが求められます。
更新を怠ると、許可が無効となるため、注意が必要です。
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特定建設業許可に関する最新の法改正
2020年改正建設業法のポイント
2020年の建設業法改正では、特定建設業の許可要件が強化されました。特に、安全管理体制の整備や技術者の資格要件が厳格化されました。
また、外国人技術者の受け入れに関する規定も見直されていますので、注意が必要です。
社会保険加入義務化の影響
社会保険加入義務化により、建設業者は従業員の健康保険や年金保険に加入する必要があります。
これにより、従業員の福利厚生が向上し、労働環境が改善される一方で、業者にとってはコストが増加することが予想されます。
今後予定されている法改正の動向
今後の法改正では、持続可能な建設業の推進やデジタル化の促進が予想されます。特に、環境保護やエネルギー効率の向上に関する規定が強化される可能性があるため、注意が必要です。また、AIやIoT技術の活用が進む中で、新たな技術基準の設定も検討されています。
もし、特定建設業の許可要件などに関する疑問やお悩みのある方は、いますぐ「ビーバーズ」にご相談ください。貴社に最適な人材やソリューションを提供いたします。