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建設業の利益率の目安は20〜25%
利益率を上げる対策・ポイントを解説

建設業の利益率の目安は20〜25%!計算方法や数値を上げる対策、ポイントを解説

建設業界動向・情報

建設業で会社を経営する場合、自社の経営を左右する利益率の把握は必須といえるでしょう。

ただ、建設業の中でもどんな商品を販売するか、どんなサービスを提供するかによって平均的な利益率は異なります。

今回は建設業の利益率の目安や、業種別の利益率の違い、利益率を維持するためのポイントを解説します。

自社の利益率が他社と比べて高い・低いかを確かめたい人や、利益率を維持する方法を知りたい人はぜひ参考にしてください。

建設業の利益率の目安とは

建設業の利益率の目安は20〜25%ほどです。

利益率は、売上原価をいかに小さくして売り上げを増やすかで、数値を上げることが可能です。

どんな商品・サービスを提供するかによって異なるため、業界別で以下の違いがあります。

業種 売上高総利益率
建設業 20.92%
製造業 21.97%
情報通信業 44.85%
卸売業 16.15%
小売業 31.01%
不動産業・物品賃貸業 46.97%
宿泊業・飲食サービス業 64.55%

引用:[平成29年調査の概況|総務省]

データを見ると、利益率が一番高いのは宿泊・飲食サービス業です。

利益率が一番高い業界と低い業界の間には50%ほどの違いがあります。

建設業の中でもハウスメーカーとゼネコン、中小企業と大企業では利益率に差が出るため、同じ規模の会社との比較で自社の状態を把握すると良いでしょう。

建設業の利益率で扱う5種類の数字を解説

建設業で活用される利益率は、主に以下の5種類です。

ここからはそれぞれの利益率の算出方法や概要を解説します。

  • 売上高総利益率(粗利益率)
  • 売上高営業利益率
  • 売上高経常利益率
  • 総資本経常利益率(ROA)
  • 自己資本利益率(ROE)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

売上高総利益率(粗利益率)

売上高総利益率は粗利益率とも呼ばれます。

売上高総利益率は、契約金額に当てはまる売上から、原材料費や直接労務費などの工事原価を差し引いた利益の割合のことです。

計算式は以下のとおり。

売上高総利益率(粗利益率)=売上総利益÷売上高×100
粗利益=工事価格(売上高)-工事原価(売上原価)

売上高総利益率(粗利益率)でわかることは、販売している商品の利益率が高いかどうかです。

引用:[建設業の経営分析(令和3年度)]

データを見ると、建設業の売上高総利益率の目安は20〜25%ほどです。

一方でサービス業の売上高総利益率は50%近いデータが出ています。

売上高総利益率は販売する商品やサービスによって平均値が異なるため、比較する場合は競合他社の数値を参考にするのがおすすめです。

売上高営業利益率

売上高営業利益率は、営業活動による利益の割合を示します。

売上高から売上原価や販売費、一般管理費を差し引いて算出できます。

売上高営業利益率の計算方法は以下のとおり。

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100

引用:[建設業の経営分析(令和3年度)]

データを見ると、建設業の売上高営業利益率の目安は3%前後です。

全業界を見ても、売上高営業利益率は1〜5%ほどという結果が出ています。

売上高営業利益率は、本業の事業活動における純粋な利益を表す数値です。

つまり効率的な経営ができているかを確認したい会社は、営業利益率をあげる対策に取り組むと良いでしょう。

売上高経常利益率

売上高経常利益率とは、通常の事業活動から得られる利益の割合のこと。

税金や金利などの負担を考慮した数値で、経営の持続可能性を評価する際に重要な指標になります。

売上高経常利益率の計算方法は以下のとおりです。

売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100

引用:[建設業の経営分析(令和3年度)]

データを見ると、建設業における売上高経常利益率の目安は5%程度。

本業以外の収入源があれば、平均よりも売上高経常利益率が上がる可能性や、貿易費・物価の上昇などで売上高経常利益率が下がる場合もあります。

つまり、売上高経常利益が高い企業は、本業で余った資産を上手く活用できているということ。

売上高経常利益を見ることで、その会社の経営力を知ることができるでしょう。

総資本経常利益率(ROA)

総資本経常利益率(ROA)とは、経営を行う資源といえる総資産を、効率的に活用して利益に結びつけているかを示す数値のこと。

総資本経常利益率の算出方法は、当期純損益を総資産で割る方法です。

計算式は以下のとおり。

総資本経常利益率(ROA)=当期純利益÷総資産×100

引用:[建設業の経営分析(令和3年度)]

データによると、建設業の総資本経常利益率の目安は6%前後です。

売上高総利益率では50%以上の高い数値を出していた接客業ですが、総資本経常利益率の数値は4つの産業の中でも最も低い数値になっています。

総資本経常利益率の数値は、高ければ高いほど、効率的に経営ができていることを示しています。

自己資本利益率

自己資本利益率とはROE(Return On Equity)とも呼ばれます。

自己資本利益率とは、会社が保有する自己資本に対して、どれだけ利益を生み出したかを表す指標のことです。

計算方法は以下のとおり。

自己資本経常利益率(ROE)=純利益 ÷ 自己資本
税引前利益=経常利益+特別利益-特別損失
純利益=税引前当期純利益-利益にかかる税金

自己資本利益率は、返済の必要がない資本をどれだけうまく活用できているかを示す値です。

自己資本利益率が高い会社は、自己資本を使って効率よく稼げているということ。

経営が上手いという点から、株主から見ると投資価値のある会社といえるでしょう。

【企業別】建設業の利益率の目安を比較

ここからは、建設業のさまざまな企業の利益率を比較します。

今回比較するのはこちらの2つです。

大手ゼネコン5社の利益率を比較
大手ハウスメーカー5社の利益率を比較

それぞれ詳しく見ていきましょう。

大手ゼネコン5社の利益率を比較

大手ゼネコン5社のそれぞれの利益率は以下のとおり。

鹿島建設 大成建設 大林組 清水建設 竹中工務店
単位 億円 億円 億円 億円 億円
売上高 20,796 15,432 19,228 14,829 13,754
売上総利益(粗利) 2,557 1,877 1,543 1,396 1,100
粗利率(粗利益率) 12.3 12.2% 8.0% 9.4% 7.9%
営業利益 1,233 960 410 451 283
営業利益率 5.9% 6.2% 2.1% 3.0% 2.0%
経常利益 1,521 1,032 498 504 393
当期純利益 1,038 714 391 477 302

データを見ると、大手ゼネコンの粗利率は8〜12%と、建設業の粗利率の目安である20〜25%よりも低いことがわかります。

大手ゼネコンは大規模な工事を請け負う中で、下請けに一部の工事の依頼をすることがほとんど。

自社で一括して工事を受けない点から、工事にかかる費用が高くなっています。

大手ハウスメーカー5社の利益率を比較

大手ハウスメーカー5社の利益率は以下のとおり。

大和ハウス 積水ハウス 旭化成ホームズ 住友林業 飯田グループHD
単位 億円 億円 億円 億円 億円
売上高 49,081 29,288 27,265 16,697 14,397
売上総利益(粗利) 9,551 5,842 7,738 3,929 2,511
粗利率(粗利益率) 19.5% 19.9% 28.4% 23.5% 17.4%
営業利益 4,653 2,614 1,284 1,582 1,023
営業利益率 9.5% 8.9% 4.7% 9.5% 7.1%
経常利益 4,560 2,572 1,215 1,949 1,066
当期純利益 2,252 1,845 -913 1,086 755

ハウスメーカーの粗利率は大手ゼネコンと比べて数値が安定しています。

売上高営業利益率の目安は1〜5%ほどと説明していましたが、ハウスメーカーの売上高営業利益率は7〜9.5%とかなり高いことがわかります。

販売する製品の値段が高いことから、営業に対する利益が高いといえるでしょう。

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建設業の利益率に影響を与える要素

建設業の利益率は以下の要素によって左右されます。

  • 建設資材の高騰
  • 天候や自然災害
  • 競合他社との価格競争

それぞれ詳しく見ていきましょう。

建設資材の高騰

建設業では建築資材の高騰が、利益率に大きな影響を与えています。

引用:[日経クロステック]

たとえば建物の土台を作る際に必要な生コンクリートの価格は、2020年10月と比較すると、1㎥当たりの価格が4,000円近く値上がりしています。

建設工事に必要な資材は、工事の品質を保つためにも減らすことはできません。

複数の資材メーカーの料金を細かく見積もって、できるだけ安く仕入れることが、利益率の維持につながるでしょう。

天候や自然災害

天候や自然災害によって工期の遅れや追加コストが発生するリスクがあります。

追加コストが発生すれば、その分利益率も下がってしまいます。

特に近年は自然災害の被害の割合が増加しており、利益率を維持するために事前の対応が必要です。

リスク管理として効果的なのは、災害保険の活用です。

災害に対応するかどうか、保証範囲はどこまでか、支払われる金額はいくらなのか、保険会社を比較して、災害発生時の被害を最小限に抑えられる対策を行いましょう。

競合他社との価格競争

建設業の利益率を下げる原因は、競合他社との価格競争です。

下請け会社になればなるほど、元請けから選ばれる条件には「安さ」が重要な要素になります。

そのため、他社よりも安いプランで仕事を請け負うことが増え、結果的に利益率を下げてしまうということ。

資材の高騰などの背景もあるため、安すぎる工事を請け負ってしまえば、結果的に損失になるリスクがあることを理解しておきましょう。

建設業の利益率を維持するための3つの対策

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建設業の利益率を維持するには、以下の3つの対策がおすすめです。

  • 原価管理を徹底する
  • 競合に負けない自社のブランディングを実現する
  • 生産性をあげる

それぞれ詳しく解説します。

原価管理を徹底する

建設業の利益率を高めるには、徹底した原価管理は不可欠な取り組みの一つです。

資材の価格や人件費、道具代などを見直して、取引先の変更や人材カットを検討しましょう。

人件費を例に挙げると、工事に必要な作業員の人数よりも多く雇っていれば作業時に暇になる人が出て、人が足りなければ追加で残業代を支払う必要が出てしまいます。

資材費にも同じことがいえます。

原価を減らしすぎるとクオリティの低下やサービスの質の低下というトラブルが発生することも。

バランスを調整しながら、無駄のない原価管理を進めることが大切です。

競合に負けない自社のブランディングを実現する

競合他社との価格競争から抜け出すには、自社ならではのブランディングを行うことが大切です。

たとえば、ハウスメーカーの大和ハウスは平均坪単価が他のハウスメーカーと比較して30万円以上高い特徴があります。

坪単価が高いにもかかわらず大和ハウスがハウスメーカーの大手を維持できる理由は、「高耐震」「高耐久」「省エネ」といった自社ならではの強みを持っているから。

高級住宅を求める顧客をターゲットに絞ってブランディングしているため、他社との競争をすることなく、自社で自由な価格設定ができています。

特に下請けになることが多い中小企業は、独自性を打ち出してブランディングを強化しなければ、価格競争から抜け出せません。

自社にしかない強みや提供できる付加価値を分析し、差別化を図りましょう。

生産性をあげる

生産性の向上は会社全体の仕事のモチベーションを上げることにもつながります。

すぐに取り組める生産性を上げる方法は以下のとおり。

  • DX化を進める
  • 社員の福利厚生を充実させる
  • 資格取得支援制度や資格手当を設置する
  • 新入社員の研修制度を提供する
  • 週休2日にする

労働環境が改善され、社員のやる気が出ることで生産性が向上します。

自社の改善点を分析する場合は、自社の社員にアンケートを取る方法がおすすめです。

建設業では2024年問題に向けて働き方改革や労働生産性向上が大きなテーマとなっており、その中で中核となるテーマが「DX推進」であると言えるでしょう。

DXとは(デジタルトランスフォーメーション)の略であり、企業がデジタル技術を用いて業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出だけでなく、根本的な業務改善フローを確立することや企業風土の変革を実現させることを意味します。

日本企業は先進国の企業の中ではDX化の遅れが顕著であり、その中でも建設業に関しては最もDX化が遅れている業界と言われています。

また、現在、市場に存在するDXコンサルティング企業の手法が建設業に中々合わないという事情も建設業のDX化を阻む原因となっています。

ビーバーズは唯一の建設業特化のDXコンサルティングを行っており、建設業のニーズにマッチしたサービスを提供可能です。

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まとめ

今回は建設業の利益率の目安や、自社の経営力を把握するために確認すべき指標の解説、大手ゼネコンやハウスメーカーの利益率の目安から目指すべき利益率を把握しました。

建設業全体の利益率(売上高総利益率)の目安は20〜25%ほどです。

建設業で利益率を上げるには、自社内の原価管理の見直しや、競合他社との差別化によるブランディングが重要な要素になるでしょう。

原価管理を徹底し自社に最適な人材や在庫を保有すれば、無駄なコストを発生せずに工事に取り組めますし、自社の強みを活かして商品・サービスをブランディングできれば、競合との価格競争に巻き込まれずに済みます。

まずは自社の利益率をデータとして算出し、必要なポイント、削減すべきポイントをまとめましょう。

この記事の監修者
agent-yamakita
山北 格也キャリアコンサルタント
大学卒業後、大手人材紹介会社へ入社。ヘッドハンティングに携わり、同期1位など顕著な営業成績を残した後に株式会社ビーバーズへ入社。これまで建設業界を中心に、1000名以上の転職を支援した実績を持つ。

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