
建設業の外国人労働者の適性賃金は?在留資格や法的な観点から徹底解説
建設業界で外国人労働者を雇用する際、適正な賃金設定は重要な課題です。
賃金が適正でない場合には、在留資格の認定が下りない可能性や離職のリスクが生じるため、法的な基準を理解し遵守することが求められます。
また、日本人労働者と同等以上の賃金を支払う必要があるため、技能実習生や特定技能外国人の平均賃金など、具体的な基準を把握することが欠かせません。
そこで本記事では、在留資格や法的観点から建設業における外国人労働者の適正賃金について詳しく解説し、雇用における課題と解決策も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
建設業における外国人労働者の現状
まずはじめに、建設業における外国人労働者の現状を確認します。
建設業界の人手不足と外国人労働者の需要
少子高齢化によって国内の労働者が減少し、建設業界では若手人材の確保が困難な状況です。近年は、東京オリンピックや大阪万博、都市再開発や老朽化した生活インフラのメンテナンスなどの需要の増加もあり、外国人労働者の需要が急激に高まっています。
このような状況の中、技能実習修了者を対象とした受け入れ事業などが進められ、外国人労働者の役割が急速に拡大しています。
在留資格別の外国人労働者の割合
建設業における外国人労働者は、技能実習生や特定技能1号・2号の資格を持つ者が中心です。
特定技能1号では型枠施工や鉄筋施工などの職種が対象で、2022年の改正後はさらに多くの業務で活躍可能となりました。
技能実習生は短期的な労働力として、特定技能は長期的な雇用を目指した制度です。
関連記事:特定技能と実習生の違いとは?建設会社が受け入れる際の注意点を解説
外国人労働者の賃金に関する法的基準
最低賃金法の適用
日本では、最低賃金法に基づき、すべての労働者に最低賃金が適用されます。これは外国人労働者も例外ではなく、日本人と同様に地域別や業種別の最低賃金が適用されるため、注意が必要です。
雇用主は最低賃金以上の賃金を支払う義務があり、違反した場合には罰則が科されます。
最低賃金は毎年見直され、地域や業種ごとに異なるため、最新情報を確認することが重要です。
労働基準法における差別的な取扱いの禁止
労働基準法では、国籍や性別などに基づく差別的な取扱いを禁止しています。
外国人労働者も日本人と同等の待遇を受ける権利があり、賃金や労働条件において不当な差別を受けることは許されません。
同一労働同一賃金の原則も適用されるため、同じ仕事には同じ賃金が支払われるべきです。
在留資格による賃金規定の違い
外国人労働者の賃金は、在留資格によって異なる場合があります。例えば、特定技能の資格を持つ労働者は即戦力として高い賃金が設定されることが一般的です。
一方、技能実習生は研修目的のため、最低賃金に近い水準で設定されることが多いです。
そこで企業では、在留資格ごとの規定を理解し、適正な賃金を設定する必要があります。
特定技能外国人の賃金相場
特定技能外国人の平均賃金
特定技能外国人の平均賃金は、令和5年の厚生労働省の調査で月額198,000円と報告されています。この金額は、技能実習生よりも高く、日本人労働者と同等以上の水準を維持しています。
業種や地域によって差はありますが、特定技能制度の目的に沿った適正な賃金が設定されているといえるでしょう。
日本人労働者との賃金比較
特定技能外国人の賃金は、日本人労働者と同等以上であることが法律で定められています。同じ業務内容や責任を持つ場合、賃金に差をつけることは許されません。このため、特定技能外国人の賃金は日本人労働者とほぼ同水準であり、差別的な待遇を防ぐ仕組みが整っているといえます。
月給制の必要性と背景
特定技能外国人の雇用において月給制が推奨される背景には、安定した生活基盤の確保があります。特に外国人労働者は、住居費や生活費の負担が大きいため、安定した収入が求められます。
また、月給制は労働基準法に基づく適正な労働条件を保証し、雇用主と労働者の信頼関係を築く上でも重要です。
適正な賃金設定のポイント
日本人と同等以上の賃金設定
前述した通り、外国人労働者の賃金は、日本人と同等以上であることが法律で義務付けられています。同一労働同一賃金の原則に基づき、同じ業務内容であれば賃金に差をつけることは許されません。この規定は、外国人労働者の権利を守り、不当な差別を防ぐために重要です。
地域別最低賃金の考慮
最低賃金法により、地域ごとに定められた最低賃金が適用されます。これは外国人労働者も例外ではなく、雇用主は地域別最低賃金を下回らない賃金を支払う義務があります。
なお、最低賃金は毎年見直されるため、最新情報を確認することが重要です。
時間外労働と休日出勤の割増賃金
労働基準法では、時間外労働や休日出勤に対して割増賃金を支払うことが義務付けられています。時間外労働には25%以上、休日出勤には35%以上の割増率が適用されます。
これにより、労働者の適正な労働条件が確保される仕組みです。
在留資格別の賃金相場と特徴
技能実習生の賃金
令和5年の厚生労働省の調査によると、技能実習生の平均賃金は月額約181,700円となっています。これは、地域や業種によって異なりますが、最低賃金に近い水準です。
技能実習制度は研修目的であるため、賃金は比較的低めに設定されていますが、最低賃金法や労働基準法が適用されるため、適正な賃金が保証されています。
特定技能1号と2号の違い
出典:出入国在留管理庁
特定技能1号は即戦力としての労働を目的とし、16分野での就労が可能です。一方、特定技能2号は熟練技能を持つ労働者を対象とし、建設業や造船業などの分野で無期限の在留が認められます。
なお、より高い技術レベルが求められる特定技能2号の方が、特定技能1号よりも賃金水準が高い傾向にあります。
専門的・技術的分野の外国人労働者の賃金
令和5年の厚生労働省の調査では、専門的・技術的分野の外国人労働者の平均賃金は月額296,700円となっています。これらの職種は高度なスキルや知識を必要とする職種であるため、他の在留資格よりも高い水準です。
特にエンジニアや研究者などの職種では、賃金がさらに高くなる傾向があります。
弊社は、建設業界特化の総合ソリューション企業として、人材紹介から事業承継型M&A仲介など、経営に関するあらゆるお悩みを解決いたします。
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賃金以外の待遇と福利厚生
社会保険加入の義務
日本では、一定の条件を満たす場合、企業が従業員に対して社会保険を提供する義務があります。社会保険には、健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険などが含まれており、従業員の生活を保障する重要な制度の一つです。
なお、保険料は企業と従業員の双方で分担して負担し、従業員の安心と安定した生活を支える役割を果たします。
住宅支援や生活サポート
企業によっては、従業員に対して住宅手当や社宅の提供などの住宅支援を行う場合があります。また、生活サポートとして食事補助や交通費支給、保養施設の利用などを提供することもあります。
これらの福利厚生は、従業員の生活の質を向上させ、働きやすい環境を整えることが目的です。
キャリアアップの機会提供
企業は、従業員のスキル向上やキャリア形成を支援するために、研修や資格取得支援、セミナー参加費の補助などを提供するケースがあります。これにより、従業員の能力を高め、企業の競争力を向上させるとともに、従業員のモチベーションを維持する効果があります。
外国人労働者の給与計算と控除
源泉所得税と社会保険料の控除
外国人労働者の給与からは、源泉所得税と社会保険料が控除されます。源泉所得税は、居住者の場合、日本人と同様に税額表に基づいて計算され、非居住者の場合は原則20.42%の税率が適用されます。
なお、社会保険料には健康保険や厚生年金保険、雇用保険などが含まれ、給与から自動的に控除される仕組みです。
住民税の取り扱い
住民税は、前年の所得に基づいて計算され、翌年6月から翌々年5月まで給与から控除されます。外国人労働者も日本人と同様に住民税を支払う義務がありますが、初年度は課税されない場合があります。
なお、退職する際には、前年度の住民税を最終月の給与や退職金から一括徴収するのが一般的です。
控除に関する事前説明の重要性
控除に関する事前説明は、外国人労働者との信頼関係を築く上で重要です。
総支給額と手取り額の違いや、控除の内訳を明確に説明することで、誤解やトラブルを防ぎ、安心して働ける環境を提供できます。
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適正賃金支払いのメリットとリスク
人材確保と定着率向上
適正な賃金の支払いは、優秀な人材を確保し、定着率を向上させる重要な要素です。
競争力のある賃金を提供することで、求職者にとって魅力的な企業となり、既存の従業員も満足度が向上します。
結果として、退職率が低下し、採用や研修にかかるコスト削減にも寄与するでしょう。
コンプライアンス違反のリスク
賃金が法律や規制に違反している場合、企業は行政指導や罰則を受ける可能性があります。
さらに、従業員とのトラブルや訴訟リスクも高まり、企業の信頼性が損なわれる恐れがあります。
このように、法令遵守は、企業運営の基本的かつ重要な要素なのです。
企業イメージへの影響
適正な賃金支払いは、企業の外部イメージを向上させる効果があります。
従業員を大切にする企業として認識されることで、求職者や顧客からの信頼を得やすくなるでしょう。
一方、不適切な賃金設定は企業イメージを損なうリスクが高いです。
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外国人労働者の賃金に関する将来の展望
建設業界における賃金動向
建設業界では、少子高齢化による人手不足が続く中、外国人労働者の賃金は安定的に上昇する傾向にあります。特に特定技能制度の導入により、即戦力としての外国人労働者の需要が高まり、賃金水準が向上しています。
そこで企業では、地域や業種による差はあるものの、競争力のある賃金設定が必要な状況です。
政府の外国人労働者政策の方向性
日本政府は、外国人労働者の受け入れを拡大する政策を進めています。これは、特定技能制度の対象分野拡大や在留資格の緩和を行うことで、労働力不足の解消を目指すものです。
また、外国人労働者の権利保護や適正な労働条件の整備にも注力しており、賃金や待遇の向上が期待されています。
技能向上に伴う賃金上昇の可能性
外国人労働者が技能を向上させることで、賃金が上昇する可能性があります。特定技能2号や専門的・技術的分野では、熟練度に応じた高い賃金の設定が必要だからです。
企業側においても、研修や資格取得支援を通じて労働者のスキル向上を促進し、賃金の向上を図っている状況です。
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