品質管理のあるべき姿とは？製造業の課題と解決へ向けたQC組織の作り方

品質管理（QC）とは、製品やサービスの品質を計画、実行、管理、改善することです。品質管理は、顧客満足度の向上、コスト削減、競争力の強化など、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。

しかし、品質管理を効果的に行うには、組織全体で品質意識を高めることが必要です。特に、製造業では、品質管理の重要性が高まっています。

製造業は、市場のニーズや規制の変化に対応するために、製品の多様化や高度化を進めています。これに伴い、製品の複雑性やリスクも高まっていると言えるでしょう。

品質管理を怠ると、不良品やクレーム、リコールなどのトラブルにつながり、企業の信頼や評判を失う恐れがあります。

そこで今回は、品質管理のあるべき姿として、製造業の課題と解決へ向けたQC組織の作り方を解説します。企業の製造部門に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

品質管理の重要性と現状の課題

製造業を営む企業にとって、品質管理は非常に重要性の高い部門の1つです。なぜなら、品質管理は、顧客満足度を高め、企業の信用度や競争力を向上させ、業務の効率化やコスト削減にも良い影響を与えるからです。

品質管理の重要性3つ

品質管理の重要性は、次の3つにまとめることができます。

1. 顧客満足度の向上に寄与する
2. 企業の信頼と競争力を向上させる
3. コスト削減と業務の効率化を促進する

それぞれ解説します。

1.顧客満足度の向上に寄与する

品質管理を行うことで、製品の品質を高めることができ、顧客のニーズや期待に応えることが可能です。

顧客は、品質の高い製品に対して、満足感や信頼感を持ちます。これにより、顧客満足度が向上し、リピートや口コミなどの効果が期待できます。

2.企業の信頼と競争力を向上させる

品質管理を行うことで、製品の品質を保証することができ、企業の信頼やブランドイメージを高めることが可能です。また、品質の高い製品は、市場での差別化や優位性を生み出すことができます。

これにより、企業の競争力が向上し、市場シェアや利益などの成果が得られます。

3.コスト削減と業務の効率化を促進する

品質管理を行うことで、製品の品質を向上させると同時に、品質に関する問題や不良品の発生を減らすことができます。

品質に関する問題や不良品は、再作業や廃棄、クレーム対応などにかかるコストや時間を発生させます。そこで、品質管理を行うことで、これらのコストや時間を削減可能です。

また、品質管理を行うことで、製品の品質を改善するためのプロセスや方法を見直すことができます。これにより、製品の開発や生産の効率化を促進することができます。

品質管理における現状の課題2つ

品質管理の現状においては、次のような2つの課題があります。

1.人材不足の課題

製造業では、慢性的な人手不足が続いています。少子高齢化といった社会背景が人材不足の原因です。

人材不足は、品質管理の質やスピードに影響を与える可能性があります。人材不足を解決するためには、デジタル技術の活用や教育・育成などの対策が必要です。

2.正確性の課題

品質管理では、製品の品質を検証する際に、人の目に頼った方法ではなく、デジタル技術を使う方法が求められています。

人の目に頼った方法では、ミスやチェック漏れが生じる可能性があり、品質の保証ができません。一方、デジタル技術を使った方法では、人間の目では検出できないような不具合も、最新のIT技術を活用するシステムによって即座に検知できます。

正確性の向上は、品質管理の効率化や信頼性の向上につながる重要な要素です。

品質管理のあるべき姿とは？

品質管理とは、製品やサービスの品質を一定以上に保つために、生産から販売まで一連の製造工程を管理する活動です。

品質管理の役割は、不良品や不適合品の発生を防止し、顧客の満足度を高めることにあります。また、品質管理は、品質保証とは異なり、売り手側の視点で品質を管理することです。

品質管理の基本的な考え方

品質管理の基本的な考え方は、PDCAサイクルを回すことです。

PDCAサイクルとは、Plan（計画）・Do（実行）・Check（評価）・Action（改善）の頭文字を取ったもので、品質の維持や向上を継続的に行うためのサイクルです。

PDCAサイクルを回すことで、顧客の要求や規格に適合する品質を確保し、コストやリスクを低減することが、品質管理の目標です。

品質管理の管理工程

品質管理を行うには、工程管理、品質検証、品質改善の3つの管理を行う必要があります。工程管理とは、生産計画や作業手順を決めて、各工程の進捗や実績を管理することです。一方、品質検証とは、製品の原材料や部品、生産工程などを検査し、製品の品質が確かなものであることを検査することを指します。また、品質改善とは、発生した不具合の原因を突き止めて再発防止策を立てることです。

品質管理の手法｜QC7つ道具とSQC

品質管理には、QC7つ道具やSQCなどの手法があります。

QC7つ道具とは、数値データを集計・分析・改善するために用いられる7つの品質管理ツール群のことで、グラフやチェックシート、パレート図などがあります。

一方、SQCとは、統計的品質管理のことで、統計的なデータを収集して解析を行い、品質基準を決定して品質管理を行う手法です。

品質管理のあるべき姿

品質管理のあるべき姿とは、顧客のニーズに応える品質を提供し、競争力を高めることです。そのためには、品質管理の定義や役割、基本的な考え方や目標、管理や手法を理解し、実践することが必要です。

このように、品質管理は、製品やサービスの品質だけでなく、組織や人の品質にも影響する重要な活動と言えるでしょう。

品質管理における問題解決の手法

品質管理の問題解決の手法として、QCストーリーが挙げられます。

QCストーリーとは、品質管理（Quality Control:QC)における問題を解決するための進め方のことで、QCの問題を解決する活動を推進するための基本的な考え方として知られています。

QCストーリーのプロセス10項目

QCストーリーを効果的に進める際には、次の構成要素10項目があります。

1. テーマ
2. 現状把握
3. 目標設定
4. 活動計画
5. 原因解析
6. 対策立案
7. 対策実施
8. 効果確認
9. 歯止め
10. 反省と今後の方針

それぞれ解説します。

1.テーマ

まずは、問題解決や課題達成のためのテーマを選定します。テーマはシンプルに説明できる単独のものであることが望ましいです。

2.現状把握

次に、テーマに関する現状のデータや情報を収集し、分析します。現状の問題点や課題の状況を明確にします。

3.目標設定

現状把握ができたら、現状からどこまでの改善や達成を目指すかを数値化して、目標を設定しましょう。

目標はSMART（Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-bound）の原則に沿って具体的で達成可能なものにすることが重要です。

4.活動計画

目標を設定したら、目標を達成するために必要な活動や工程を計画します。活動の内容や担当者、期限、必要な資源などを明確にしましょう。

5.原因解析

次に、問題や課題の原因を分析します。原因の特定には、特性要因図やQC7つ道具などの品質管理の手法を活用すると良いでしょう。

原因の中でも根本的なものを特定し、仮説を立てることが重要です。

6.対策立案

原因解析ができたら、原因に対して効果的な対策を立案しましょう。そして、対策の内容や実施方法、期限、担当者、必要な資源などを明確にします。

また、対策の効果を予測し、評価基準を設定することも大切です。

7.対策実施

対策立案ができれば、次は立案した対策の実施です。実施の過程や結果を記録し、評価基準と比較しましょう。

もし問題が発生した場合は、原因を分析し、対策を修正する必要があります。

8.効果確認

対策実施が終われば、対策の効果を確認しましょう。効果確認では、目標と実績を比較し、目標が達成されたかどうかを判断します。

効果が確認できた場合は、その内容や要因を分析し、まとめます。

9.歯止め

効果の確認ができたら、効果を維持するために、歯止めと呼ばれる標準化や管理の定着を行います。歯止めには、作業手順の見直しやマニュアル化、教育や研修、設備の維持管理、工程の監視などがあります。

10.反省と今後の方針

最後に、活動全体を振り返り、反省点や改善点を洗い出しましょう。今後の方針や課題についても考え、次の活動に活かすことが重要です。

QCストーリーの具体的な事例

以下では、QCストーリーの具体的な事例を紹介します。

製品の不良率を低減するためのQCストーリーの場合

1. テーマ：自動車部品のロータ＆プーリの製造ラインの不良率削減
2. 目標：不良率を3%以下にする（現状は4.9%）
3. 活動計画：3か月間で各ステップを実施
4. 要因解析：溶接不良の原因を特性要因図で洗い出し、データ分析で検証
5. 対策立案：系統図で対策を考え、効果・費用・期間で評価
6. 対策実施：回転速度の調整、油分除去の改善などを行い、テスト流動で品質確認
7. 効果確認：不良率が2.8%に低減、目標達成
8. 標準化：作業手順の見直し、マニュアル化、教育研修などを行い、管理の定着
9. 反省：活動の振り返り、改善点や次の課題の洗い出しを行う

顧客満足度を向上させるためのQCストーリーの場合

1. テーマ：飲食店の顧客満足度の向上
2. 目標：顧客満足度を80%以上にする（現状は60%）
3. 活動計画：6か月間で各ステップを実施
4. 要因解析：顧客満足度の低下の原因をアンケートやインタビューで調査、パレート図で優先順位付け
5. 対策立案：ブレーンストーミングで対策を考え、効果・費用・期間で評価
6. 対策実施：メニューの改善、サービスの向上、店内の清掃などを行い、顧客の反応を観察
7. 効果確認：顧客満足度が85%に上昇、目標達成
8. 標準化：メニューの見直し、サービスのマニュアル化、清掃のチェックリスト作成などを行い、管理の定着
9. 反省：活動の振り返り、改善点や次の課題の洗い出しを行う

生産性を高めるためのQCストーリーの場合

1. テーマ：製品の生産性の向上
2. 目標：生産性を20%以上向上させる（現状は100個/日）
3. 活動計画：4か月間で各ステップを実施
4. 要因解析：生産性の低下の原因を作業時間の測定や工程の観察で調査、特性要因図で整理
5. 対策立案：マトリックス図法で対策を考え、効果・費用・期間で評価
6. 対策実施：作業手順の改善、設備の改良、在庫の管理などを行い、生産量の変化を記録
7. 効果確認：生産性が125個/日に向上、目標達成
8. 標準化：作業手順のマニュアル化、設備の維持管理、在庫の監視などを行い、管理の定着
9. 反省：活動の振り返り、改善点や次の課題の洗い出しを行う

コストを削減するためのQCストーリーの場合

1. テーマ：製品のコスト削減
2. 目標：製品のコストを10%以上削減する（現状は1000円/個）
3. 活動計画：5か月間で各ステップを実施
4. 要因解析：コストの高さの原因を材料費や人件費などの内訳で分析、パレート図で優先順位付け
5. 対策立案：ブレーンストーミングで対策を考え、効果・費用・期間で評価
6. 対策実施：材料の見直し、作業効率の向上、無駄の排除などを行い、コストの変化を記録
7. 効果確認：製品のコストが900円/個に削減、目標達成
8. 標準化：材料の仕様変更、作業手順のマニュアル化、無駄のチェックリスト作成などを行い、管理の定着
9. 反省：活動の振り返り、改善点や次の課題の洗い出しを行う

環境負荷を減らすためのQCストーリーの場合

1. テーマ：製品の環境負荷の低減
2. 目標：製品のCO2排出量を30%以上減らす（現状は10kg/個）
3. 活動計画：6か月間で各ステップを実施
4. 要因解析：CO2排出量の高さの原因をエネルギー消費量や廃棄物量などの内訳で分析、パレート図で優先順位付け
5. 対策立案：マトリックスデータ解析法で対策を考え、効果・費用・期間で評価
6. 対策実施：エネルギーの節約、リサイクルの促進、環境に優しい材料の使用などを行い、CO2排出量の変化を記録
7. 効果確認：製品のCO2排出量が7kg/個に減少、目標達成
8. 標準化：エネルギーの管理、リサイクルのマニュアル化、材料の仕様変更などを行い、管理の定着
9. 反省：活動の振り返り、改善点や次の課題の洗い出しを行う

QC組織の作り方

QC組織とは、品質管理（Quality Control）を行うための組織のことです。QC組織の目的は、製品やサービスの品質を一定以上に保ち、顧客の満足度を高めることにあります。

QC組織の種類と特徴

QC組織には、以下のような種類と特徴があります。

QCサークル

現場の従業員が自主的に小集団を作り、品質改善に関する活動を行う組織です。

QCサークル活動は、QC7つ道具や新QC7つ道具などの品質管理ツールを用いて、問題の分析や解決を行います。

QCサークル活動のメリットは、コミュニケーションの活性化、問題解決のスキルの向上、職場の明るさの向上などです。

品質保証部

製品やサービスの品質を保証するための組織です。

品質保証部は、製品の検査や検証、品質基準の策定、品質マニュアルの作成、品質監査の実施などの業務を行います。

品質保証部は、ISO（国際標準化機構）などの国際規格に準拠した品質管理システムを構築し、維持管理します。

品質管理部

製品やサービスの品質を管理するための組織です。

品質管理部は、工程管理、品質検証、品質改善の3つの管理を行います。

品質管理部は、IE（インダストリアルエンジニアリング）や5Sなどの品質管理手法を活用して、製品やサービスの品質を向上させます。

QC組織の作り方

QC組織の作り方は、以下の手順で行うのが効果的です。

1. 品質方針の策定
2. QC組織の設立
3. QCサークルの結成
4. QC活動の実施
5. QC活動の評価と改善

それぞれ解説します。

1.品質方針の策定

まずは、品質管理の目的や目標、基準、方針を明確にします。

2.QC組織の設立

次に、品質保証部や品質管理部などの組織を設立し、役割や責任を決めましょう。

3.QCサークルの結成

大きな組織を形成したら、次に現場の従業員を小集団に分けてQCサークルを結成し、活動テーマやメンバーを決めます。

4.QC活動の実施

QCサークルができたら、QCサークルや品質保証部、品質管理部などがそれぞれの役割に沿ってQC活動を実施します。

QC活動は、PDCAサイクルを回して計画・実行・評価・改善を繰り返すことが重要です。

5.QC活動の評価と改善

QC活動を実施したら、QC活動の成果や効果を定期的に評価し、問題点や改善点を見つけましょう。そして、QC活動の改善策を検討し、実行することを繰り返します。

QC組織の立ち上げと運営のポイント

上記のように、QC組織は、質の高い品質管理を行うために設けられる組織です。

QC組織を立ち上げる際のポイント3つ

QC組織を立ち上げる際には、以下のポイントに留意することが重要です。

1.QC組織の目的や役割を明確にすること

QC組織は、製品やサービスの品質を向上させるために、品質管理の計画・実施・評価・改善を行う組織です。

QC組織の目的や役割を明確にすることで、QC組織のメンバーや関係者の意識やモチベーションを高めることができます。

2.QC組織の体制や構成を決めること

QC組織の体制や構成は、製品やサービスの特性や規模、組織の状況や目標などに応じて決める必要があります。

そこで、QC組織のリーダーやメンバーの選定や教育、QC組織の規模や活動頻度などを考慮する必要があります。

3.QC組織の活動計画や方法を策定すること

QC組織の活動計画や方法は、品質管理の目標や課題、現状分析、改善策などを具体的に策定するものです。

そこで、QC組織の活動計画や方法を策定する際は、SMART原則やPDCAサイクル、QC7つ道具やQCストーリーなどの品質管理の手法やツールを活用するのが効果的です。

QC組織を運営する際のポイント5つ

QC組織を運営するときには、以下のポイントに注意しましょう。

1.QC組織の活動を経営層や関係部署と連携すること

QC組織の活動は、組織全体の品質向上に貢献するものです。

そこで、QC組織の活動を経営層や関係部署と連携することにより、QC組織の活動の方向性や優先順位、支援や協力などを確認できます。

2.QC組織の活動を定期的に見直しや報告を行うこと

QC組織の活動は、常に改善の余地があります。

そこで、QC組織の活動を定期的に見直し、報告を行うことで、QC組織の活動の効果や問題点、改善点などを把握できるでしょう。

3.QC組織の活動に対するフィードバックや評価を行うこと

QC組織の活動は、QC組織のメンバーや関係者の努力や成果によって成り立っています。

そこで、QC組織の活動に対するフィードバックや評価を行うことで、QC組織のメンバーや関係者のやる気や自信、スキルや知識などを高めることが可能です。

4.QC組織の活動に対する認知や支援を高めること

QC組織の活動は、組織全体の品質向上に貢献するものです。

そこで、QC組織の活動に対する認知や支援を高めることにより、QC組織の活動の価値や意義、必要性などを周知できます。

5.QC組織の活動に対するモチベーションやチームワークを維持すること

QC組織の活動は、QC組織のメンバーや関係者の協力や協働によって成り立っています。

そこで、QC組織の活動に対するモチベーションやチームワークを維持することで、QC組織の活動の楽しさややりがい、信頼や尊敬などを育むことができるでしょう。

品質管理のあるべき姿のまとめ

このように、品質管理とは、製品の性能や機能が設計どおり再現されているかをチェックし、不良品を発生させないように改善する活動です。品質管理は、顧客の満足度を高め、市場での評価や信頼を獲得することを目標とします。

品質管理の基本的な考え方は、悪いものを作らない、悪いものを流さない、不良品が発生したときは範囲を特定することにあります。

これらを鑑みて、品質管理のあるべき姿を定義づけるとすれば、自工程完結を重視し、各工程で品質の改善を図ることと言えるでしょう。

しかし、多くの企業では、品質管理に十分なリソースを割くことができない状況が続いています。人手不足が慢性化し、品質管理に優秀な人材を配置できないことは、結果として自社の信用や、顧客満足度を低下させる恐れがある重要な課題です。

このように、品質管理のあるべき姿を実現するには、優秀な品質管理人材が必要です。しかし、品質管理人材の採用はなかなか難しいのが現状です。

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