建設業における衛生管理者の役割と重要性、法的義務を徹底解説
建設業界では、安全と健康の確保が非常に重要であるため、衛生管理者が欠かせない存在です。衛生管理者は、職場の衛生環境を整え、労働者の健康を守るための専門知識を持つ人材です。この資格を持つことで、職場の安全性を高めるだけでなく、法令遵守の面でも大きな役割を果たします。
特に建設現場では、さまざまなリスクが伴うため、衛生管理者の存在が求められます。衛生管理者の資格の取得方法や具体的な役割を知ることで、より安全な職場環境を実現する手助けとなるでしょう。
そこで今回は、建設業における衛生管理者の資格の概要と役割や重要性、法的義務などを徹底解説しますので、ぜひ参考にしてください。
建設業における衛生管理者の役割と重要性
建設業における衛生管理者とは、労働者の健康と安全を守るために、職場の衛生環境を管理する専門家のことです。
衛生管理者の役割4つ
衛生管理者の主な役割は、次の4つです。
- 労働者の健康管理
- 職場環境の改善
- 労働災害の防止
- 衛生委員会の運営
それぞれ解説します。
1.労働者の健康管理
衛生管理者は、労働者の健康診断を実施し、その結果に基づいて適切な措置を講じます。これにより、労働者の健康状態を常に把握し、健康障害の予防に努めます。
具体的な活動事例:定期健康診断の実施、健康相談の実施、健康教育の実施 など
2.職場環境の改善
職場の巡視を行い、衛生状態をチェックします。問題があれば、改善策を提案し、実施します。
具体的な活動事例:職場巡視、改善提案、設備の点検 など
3.労働災害の防止
労働災害の原因を調査し、再発防止策を講じます。また、労働者に対して安全衛生教育を行い、災害の未然防止に努めます。
具体的な活動事例:リスクアセスメント、安全教育の実施、災害発生時の対応 など
4.衛生委員会の運営
衛生委員会を運営し、労働者の意見を取り入れながら、職場の衛生管理を強化します。
具体的な活動事例:委員会の開催、議題の設定、改善策の実施 など
衛生管理者は、上記のような活動を通じて、労働者の健康と安全を守るために多岐にわたる役割を担います。これらの活動は、職場環境の改善や労働災害の防止に大きく貢献するものです。
衛生管理者の重要性3つ
衛生管理者は、次の3つの点から重要な役割を果たします。
- 労働者の健康と安全の確保
- 法令遵守
- 労働災害の減少
それぞれ解説します。
1.労働者の健康と安全の確保
衛生管理者は、労働者が健康で安全に働ける環境を整える重要な人材です。具体的には、定期的な健康診断の実施や職場環境の巡視、安全教育の実施などを通じて、労働者の健康状態を常に把握し、健康障害や労働災害の予防に努めます。これにより、労働者のモチベーションや生産性が向上し、企業全体のパフォーマンスも向上します。
2.法令遵守
労働安全衛生法に基づき、一定規模以上の事業場では衛生管理者の選任が義務付けられています。衛生管理者が適切に配置され、その役割を果たすことで、企業は法令を遵守することができます。法令遵守は、企業の信頼性や社会的評価を高めるだけでなく、労働者の安全と健康を守るための基本的な要件の一つです。
3.労働災害の減少
衛生管理者の適切な活動により、労働災害の発生率が低下します。これは、リスクアセスメントや安全教育、災害発生時の迅速な対応などを通じて、労働災害の原因を特定し、再発防止策を講じるからです。これにより、企業の経済的損失が減少し、労働者の安全が確保されます。労働災害の減少は、労働者の安心感を高め、職場全体の安全文化を醸成することにもつながる重要な要素です。
上記のように、衛生管理者は労働者の健康と安全を守るために欠かせない存在であり、その活動が企業の持続可能な発展に大きく寄与するものです。
建設業における衛生管理者の配置基準
建設業では、以下の基準で衛生管理者の配置が義務付けられています。
1.常時10人以上50人未満の労働者がいる現場
常時10人以上50人未満の労働者がいる現場では、衛生推進者を選任する必要があります。衛生推進者は、小規模な現場での安全衛生管理を担当します。
労働基準監督署への報告義務はありませんが、選任は法律で義務付けられていますので、注意が必要です。
2.常時50人以上の労働者がいる現場
常時50人以上の労働者がいる現場では、衛生管理者を選任し、労働基準監督署に届け出る必要がありますので、注意しましょう。
衛生管理者は、労働者の健康管理や作業環境の改善を担当し、健康診断の実施や労働災害の防止策を講じることが求められます。
3.常時100人以上の労働者がいる大規模現場
常時100人以上の労働者がいる大規模現場では、総括安全衛生管理者を選任する必要があります。総括安全衛生管理者は、現場全体の安全衛生管理を統括する役割を担います。
参考:厚生労働省 東京労働局より
建設業に関わる衛生管理者資格の種類3つ
建設業に関わる衛生管理者資格の種類は、主に次の3つです。
- 衛生推進者
- 衛生管理者
- 総括安全衛生管理者
それぞれ解説します。
1.衛生推進者
衛生推進者は、常時10人以上50人未満の労働者がいる事業場で選任される必要があります。衛生推進者は、労働者の健康を守るための基本的な衛生管理を担当します。
衛生推進者の資格要件
衛生推進者の資格要件は、以下のとおりです。
- 大学または高等専門学校を卒業し、その後1年以上安全衛生の実務を経験した者
- 高等学校または中等教育学校を卒業し、その後3年以上安全衛生の実務を経験した者
- 学歴によらず、5年以上安全衛生の実務を経験した者
- 厚生労働省労働基準局長が定める講習を修了した者
衛生推進者の職務内容
衛生推進者の職務内容は、以下のとおりです。
- 労働者の危険や健康障害を防止するための措置
- 労働者の安全や衛生のための教育の実施
- 健康診断の実施や健康保持増進のための措置
- 労働災害の原因調査および再発防止対策
2.衛生管理者
衛生管理者は、常時50人以上の労働者がいる事業場で選任される必要があります。衛生管理者は、より専門的な知識を持ち、労働者の健康管理や作業環境の改善を担当します。
衛生管理者の資格の種類
建設業に必要となる衛生管理者の資格は、第一種衛生管理者資格です。また、これ以外にも、第二種衛生管理者と衛生工学衛生管理者があり、それぞれに特定の業種が決まっています。
3.総括安全衛生管理者
総括安全衛生管理者は、常時100人以上の労働者がいる事業場で選任される必要があります。総括安全衛生管理者は、事業場全体の安全衛生管理を統括する役割を担います。
総括安全衛生管理者の資格要件
総括安全衛生管理者の資格要件は、事業場の実施を実質的に統括管理する権限および責任を有する者(例: 工場長)とされています。
総括安全衛生管理者の職務内容
総括安全衛生管理者の職務内容は、以下のとおりです。
- 労働者の危険や健康障害を防止するための措置
- 労働者の安全や衛生のための教育の実施
- 健康診断の実施や健康保持増進のための措置
- 労働災害の原因調査および再発防止対策。
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衛生管理者の具体的な業務内容9つ
衛生管理者の具体的な業務内容には、以下のようなものがあります。
- 健康に異常がある者の発見及び処置
- 作業環境の衛生上の調査
- 作業条件、施設等の衛生上の改善
- 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
- 衛生教育、健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
- 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
- 他の事業の労働者が行う作業と同一の場所における衛生に関する措置
- その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等
- 週1回以上の事業場の巡視
それぞれ解説します。
1.健康に異常がある者の発見及び処置
健康に異常がある社員を早期に発見し、適切な処置を行います。例えば、体調不良を訴える社員に対して休憩を促したり、必要に応じて医療機関への受診を手配するなどです。また、怪我が発生した場合には迅速に応急処置を行い、救急車の手配や病院への付き添いも行います。
2.作業環境の衛生上の調査
作業環境が安全で衛生的であるかを定期的に調査します。具体的には、温度や湿度の管理、適切な照明の確保、医療廃棄物の適切な処理などの確認です。これにより、社員が安心して働ける環境を維持します。
3.作業条件、施設等の衛生上の改善
作業条件や施設の衛生状態を改善するための措置を講じます。例えば、トイレや休憩室の清掃状況をチェックし、必要に応じた改善指示などです。また、ハンドソープやアルコール消毒液の補充状況も確認します。
4.労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
労働衛生保護具や救急用具の点検と整備を行います。例えば、救急箱やAEDの管理、化学防護手袋や保護眼鏡の整備などです。これにより、緊急時に迅速に対応できるようにします。
5.衛生教育、健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
社員に対する衛生教育や健康相談を実施します。例えば、健康診断の重要性を周知したり、流行している疾病に関する情報提供などです。また、メンタルヘルス相談や産業医との連携も行います。
6.労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
社員の負傷や疾病に関するデータを収集し、統計を作成します。また、このデータを通じて労働環境の改善に役立てることが重要な役割です。特に労災が発生した場合には、迅速に対応し、再発防止策を講じます。
7.他の事業の労働者が行う作業と同一の場所における衛生に関する措置
他の事業の労働者が同じ場所で作業する場合の衛生管理も行います。これにより、全ての労働者が安全に作業できる環境を確保します。
8.その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等
衛生日誌の記載や職務上の記録を整備します。これにより、日々の業務内容や対策を一元管理し、必要な情報を迅速に提供できるようにします。
9.週1回以上の事業場の巡視
週に1回以上、事業場を巡視します。これにより、衛生環境や安全対策が適切に行われているかを確認し、必要な改善を行います。
衛生管理者が建設現場で果たす具体的な役割7つ
衛生管理者が建設現場で果たす具体的な役割には、次の7つが挙げられます。
- 労働者の健康と安全の確保
- 作業環境の衛生管理
- 労働衛生保護具の管理
- 衛生教育と健康相談
- 統計の作成と報告
- 他の事業者との連携
- 巡視と改善提案
それぞれ解説します。
1.労働者の健康と安全の確保
建設現場では、労働者の健康と安全を確保するために、衛生管理者が重要な役割を果たします。例えば、作業環境の定期的なチェックや健康診断の実施を通じて、労働者の健康状態を把握し、必要な対策を講じます。
2.作業環境の衛生管理
作業環境が安全で衛生的であることを確認するために、定期的な巡視を行います。これには、適切な換気、照明、騒音レベルの管理などが含まれます。また、危険物の取り扱いや廃棄物の処理についての監督も重要な仕事です。
3.労働衛生保護具の管理
労働者が適切な保護具を使用しているかを確認し、その点検と整備を行います。例えば、ヘルメットや安全靴、保護メガネなどの使用状況をチェックし、必要に応じて交換や補充を行います。
4.衛生教育と健康相談
労働者に対する衛生教育や健康相談を実施します。これには、作業中のリスクや健康管理の重要性についての教育が含まれます。また、労働者が健康に関する問題を相談できる環境を整えるのも重要な仕事です。
5.統計の作成と報告
労働者の負傷や疾病に関するデータを収集し、統計を作成します。これにより、労働環境の改善に役立てることができます。特に労災が発生した場合には、迅速に対応し、再発防止策を講じなければなりません。
6.他の事業者との連携
建設現場では、複数の事業者が同じ場所で作業を行うことが多いため、他の事業者と連携して衛生管理を行います。これにより、全ての労働者が安全に作業できる環境を確保します。
7.巡視と改善提案
週に1回以上、現場を巡視し、衛生環境や安全対策が適切に行われているかを確認します。問題が発見された場合には、迅速に改善提案を行い、これを実施します。
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衛生管理者の選任と法的義務
事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生管理者を選任する義務があります。選任は、該当する事由が発生した日から14日以内に行い、選任報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
選任すべき人数
事業場の規模に応じて、選任すべき衛生管理者の人数が決まっています。
事業場の規模 | 選任すべき衛生管理者の人数 |
50人以上200人以下 | 1人以上 |
200人超500人以下 | 2人以上 |
500人超1,000人以下 | 3人以上 |
1,000人超2,000人以下 | 4人以上 |
2,000人超3,000人以下 | 5人以上 |
3,000人超 | 6人以上 |
なお、常時10人以上50人未満の労働者がいる現場では、衛生推進者を選任します。また、常時100人以上の労働者がいる大規模現場では、総括安全衛生管理者を選任する必要があります。
それぞれの詳しい内容は、こちらをご参照ください。
衛生管理者の資格
衛生管理者に選任されるためには、業種に応じた資格が必要です。例えば、第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタントなどが該当します。
法的義務
衛生管理者には、以下のような法的義務があります。
- 労働者の健康障害を防止するための措置を講じること。
- 労働者の安全または衛生のための教育を実施すること。
- 健康診断の実施や健康保持増進のための措置を行うこと。
- 労働災害防止の原因調査および再発防止対策を講じること。
また、衛生管理者は少なくとも毎週1回作業場を巡視し、設備や作業方法、衛生状態に有害のおそれがある場合には、直ちに必要な措置を講じる義務があります。
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建設業における衛生管理者のまとめ
このように、建設業において、安全管理者と衛生管理者は非常に重要な役割を果たします。しかし、実際の建設現場に、どのような人材をどのように配置すべきかわからないという方も多いのではないでしょうか。
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